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彼は優しい人だ。
誰に対しても優しく接し、人を傷付ける様な事はしたくないと言っていた。
そんな優しい彼は、僕の恋人だ。
「これから、後輩が来るって。何か悩んでいるみたいなんだ。」
携帯に着信があった時から嫌な予感はしていた。
「悪い、今日は帰ってもらってもいい?本当にごめん。必ず埋め合わせするから。」
きっと、こうなるだろうと。
「それじゃあ、また連絡する。」
一方的に話をまとめ終わらせた彼は、僕の飲みかけのコーヒーカップを流しに置いた。
「…それじゃあ。」
「ああ。」
こちらに目を向けず、これから来るであろう後輩とのメールに夢中になっている彼に声を掛け、家を出た。
玄関のドアを閉め、大きく溜め息を吐く。
「今日は、前の時の埋め合わせだったのにな。」
埋め合わせを何度してもらっただろうか?
「…次は、見送ってくれるかな。」
彼の携帯が鳴る度、こうやって一人、彼の家を出るのだ。
付き合い始めたきっかけは、職場で僕がコピー機を詰まらせ、それを見掛けた彼が直してくれた事だ。申し訳ない気持ちで何度も頭を下げる僕に優しい言葉を掛けてくれた彼に人として惹かれ、部署の違う彼を探し声を掛けた。同期という事もあり、直ぐに友人になった。彼は友人が多く、人当たりの良い性格で、さらに人を思いやる事が出来る。会社での評判もとても良いのだと同じ課の同僚も言っていた。そんな彼を知っていく内に益々惹かれ、そして、暫くして僕は彼に想いを告げた。
「いいよ。」
嫌悪せず、笑顔でそう僕に言った彼にとても驚いた。告白すると決めたものの、どうせ駄目だろうと思ったし、もう口も利いて貰えなくなるだろうと思っていたからだ。
「本当、に?」
「本当だ、恋人になろう。」
嬉しくて、僕は何度も頷きながら、泣いた。
それから一年近く経ったけれど、僕達は恋人同士でいる。こんなに幸せな事はない。
だから、不安になどなってはいけない。
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