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「お前に告白されて、正直とても驚いた。どうすればいいのかって焦りもした。でも恋人になろうって言った時、お前がすごく喜んでくれて、これで良かったんだって思った反面、罪悪感もあった。俺は、お前の事を恋愛対象としては好きじゃなかったから。酷いよな。お前を可哀想だなんて思って、そんなの優しさでも何でもないのにな。」
ハンドルを握る彼の手が僅かに震えている様な気がした。
「付き合い始めてからも、友人の様に思って接していた。それから何か月か経って、恋人なんだったらキスしたり、体の関係ってあるものだよなって考えるようになった。元々、同性愛に偏見はなかった。でも自分がそれを出来るか不安になった。」
心がじくじくと痛む。義務の様にしか思っていなかった、彼はそう言っているのだ。
「でもお前が初めて俺の家に泊まった時、恥ずかしそうに頬を赤く染めたお前に、俺は欲情した。お前に触れたくて、お前の全てを見たくて、抱いている時も夢中だった。」
赤信号になり、停車すると、彼は僕を見た。
「友人に対しての様な気持ちしかないのに、お前を抱いて、それから自分の気持ちが分からなくなった。お前に対する気持ちが同情なのか、愛情なのか。」
そして目を伏せると前に向き直った。
「でもお前と別れようとは思わなかった。そうしたら段々、このままの関係でもいいのかもしれないと思うようになった。今まで付き合ってきた相手は皆、俺が友人や他の付き合いを優先する事に怒ってよく言っていたよ。もっと自分を優先して欲しいって。俺はどちらも大切にしているつもりだった。だから苛ついたりもした。でもお前は我儘も言わなくて、俺が友人を優先する事があっても怒ったりしない。」
信号が変わり彼は苦笑を浮かべ、車を発進させた。
「だからって何も思わないわけがないよな。お前に甘えて、蔑にして、俺の都合の良い様に扱っていたと思われても仕方ないと思う。俺は本当に馬鹿で、大切な事に何も気付いていなかった。」
そうさせたのは僕のせいでもあるのだ。逃げ出さず、どんな結末になろうと彼に向き合うべきだった。
「あの時、お前にもう終わりにしようと言われて、目の前が真っ暗になった。お前を好きだと言えないくせに、お前を引き留める為の言葉を必死に探していた。そしてお前が目の前からいなくなって、その時初めてお前を恋人として好きになっていたんだと気付いた。」
彼は諦めたくないと言った。まだやり直せるのなら、今度こそ間違えない。だから僕も、彼を諦めない。
「君は、僕を、好きなの?」
「ああ、好きだ。お前の恋人でいたい。」
僕の目から涙が零れ落ちた。それに慌てたのか彼は車を止め、僕の頭を撫でそっと抱き寄せた。もうだいぶ郊外まで来てはいるけれど人通りがないわけではない。僕が慌てて離れようすると、彼はそれをさせず僕の体を強く抱き締めた。
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