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「…ごめんな。」
僕は彼の胸に顔を埋める。
「…好きだよ、僕も。」
そう言った途端、彼にさらに強く抱き締められる。暫くそうして涙が止まるのを待った。
「本当は寂しかった。でも、言えなかった。君が、僕に友人以上の感情を持っていないのは分かっていたから。僕は、普通じゃないから、男を好きになる様な人間だから今まで恋人なんていなかった。ずっと諦めていたんだ。でも君を好きになって、優しい君なら僕を受け入れてくれるかもしれないと思った。」
最低だ、そう言うと彼は小さくそんな事はないと言った。
「君を好きな気持ちは本当だ。だから、同情でも何でもいいから、君の恋人でいたかった。」
卑怯な僕も、彼を好きな僕も、どちらも本当だ。それでも僕は彼の恋人でいてもいいのだろうか。
「君の、恋人でいたい。」
「いいに決まってる。心も、この手も、俺のせいで傷付いた。でももう二度と傷付けたりしない。寂しい思いもさせない。約束する。」
僕の包帯を巻いた手に彼がそっと触れる。僕は強い口調で言い切った彼の背中をそっと撫でた。
「優しい君が好きだ。そんな君だから君を慕う人が大勢いるんだ。僕だってそうだった。そんな君を、僕は好きになったのにね。この手は、君のせいじゃないよ。僕はもう大丈夫だから、今まで通りの君でいて欲しい。寂しい時は、そう言うから。その時は、こうやって僕を抱き締めて。」
顔を見合わせると、お互いに自然と笑みが零れる。暗闇がに光が差し、瞬く間に心が晴れて行く。
「ああ。」
そしてゆっくりと顔を近付け、唇を重ねた。僕達は、今、本当の恋人になったのだと思った。
「…行こうか。」
名残惜しそうに唇を離すと、彼は僕の頬を撫でながら少し残念そうに言った。
「…うん。」
僕も同じ気持ちだ。彼はゆっくりと車を発進させた。
穏やかな空気が車内に流れる。
時々交わす会話はぎこちなく、二人で顔を見合わせて苦笑してしまう。それでも彼と二人で過ごす時間がこんなにも幸せで心地良いと思えるのは初めての様な気がした。
「楽しみだな。」
「そうだね。」
僕達はまだ、始まったばかりだ。
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