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-Short Short- THE BASEKETBALL WHICH KUROKO PLAYS
目をつむったままでも -緑高01-
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その日は前触れもなく、やってきた。
「なあ真ちゃん、オレ彼女できた」
先ほどの「かえろーぜ」と大差ない口調に、緑間は流しかけてしまった。部活に入れ込むあまり、色恋沙汰なぞ興味ないとばかり思っていた相棒から放たれた言葉故、それはそれは吃驚させられたものだ。
「なぜ俺にわざわざ言うのだ」と、疑問系で聞いたら
「んー? ただの報告?」疑問系で返されてしまった。
高尾のファーストインプレッションは最悪だった。彼のようなタイプとの接し方が、まるでわからない緑間にわかれという方が酷だ。今でこそ、随分慣れてきて相棒も務まるようになってきていた。それでも高尾とは、本当にあらゆる価値観が異なるのだと実感させられる。
クラスでの高尾は人気者だったが、それは浅く広く付き合っている類のものだった。人気者の高尾なら、クラスの女子の1人や2人に好意を寄せられていてもおかしくはない。ただ、彼がそれこそ特定の誰かに愛と呼べる感情を注ぐなんて想像できないし、実際に今幸せそうな表情は一欠片もない。
「彼女が好きだったなんて、おれは気付かなかったのだよ。なんというか…意外だな」
「いや、そう言われると違うんだよな。他に好きな人いるもん」
なのに、どうして付き合ったりするのか。
これが緑間が価値観の違いを感じた所以だった。
「部活がない日くらいは彼女と帰るのだよ」
「うーわ、真ちゃんに恋愛方面でアドバイスもらっちゃった。そんなに高尾くんをなめてもらっては困るのだよ」
「ふん」
駐輪場の中でも、特大のスペースを占拠しているリアカーで意味をなしていないジャンケンをする。高尾から語られる他愛もない話に耳を傾けていた。
高尾の彼女は、学年でもキレイと評判の女子だった。難のない性格が人気をいっそう高めている。
「お前は何故その人と付き合おうと思ったのだ」
「マジメだね~、理由は特にないぜ。別に嫌いじゃないんだし。悪いのかよ」
なぜだか、この問いかけに一瞬口をつぐんでしまう。
「...良し悪しはおれの決めることでないだろう」
「ただ、好きでもないのに交際する神経はよくわからないのだよ」
「ふは、真ちゃん、交際って。ックク、古すぎだろー」
「む。高尾が軽すぎるだけなのだよ」
号の傍らにリアカーを止めた一瞬、切なそうに目を細めた高尾の顔を、おれは見逃さなかった。
「うんにゃ、オレはこう見えて、すんげー一途なんだぜ?」
「嘘としか思えないのだよ」
らしくなく茶化し気味に言えば、高尾はふたたび苦しそうな顔をした。
「オレ、運命の人いるって信じてるんだわ」
「迎えにきてくれた時に何もあげらんないのは、イヤだから全部残してあるぜ」
「オレのはじめて」
そんな顔をしてほしくなかった。まるで自分に言っているかのように誤解してしまいそうで。そんなことは間違ってもありえないのに。
「っ、はやくその運命とやらをみっけて幸せになるのだよ」
夕日に横顔を照らされた高尾は、ひどくキレイで、うまく言えない。
「それなら、みっけたぜ」
「オレが初めて本気になった人」
そうやって夕日は傾き始めた。高尾のココロを奪ってしまえる人に、たくさんの感情に紛れて嫉妬していることに気づいてしまった。もう、後戻りはできないだろう。
ーーーきっと、これが恋。
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