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プロローグ
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_____2年前、雨はあいつを引き留めてはくれなかった______________
ポツポツと窓ガラスをたたく水の音がする。
雨はきらいだ。
でも、高校の時はグラウンドで走らなくて済むから割と好きだったかも...なんて考えてるあたり、 俺の体が今でも貧弱なのが自分のせいだってことくらい嫌でもわかる。
「目痛くなってきたな...」
ルーペから目を離し、思い切り伸びをすると体がきしむ。
少し休もう。
カタカタと窓枠のなる音がする。
窓の外に目をやると色々な時計に囲まれた痩せぎすな25の男の姿がそこにあった。
窓に映る黒髪の哀しげな目をしたその男は雨に濡れているようだった。
いや、泣いているのか。
自分の目から逃げるように椅子から立ち上がると、21時を知らせる時計の音がなった。
ボーンボーンと静かに時を刻むその音色は床を静かに転がって胸の奥まで届くような、そんな不思議な音だ。
仕事部屋を出て奥の寝室へ向かう。
雨の日はどうも集中力が持たない 。
ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン
「はぁ....」
重い足を無理やり玄関へむけ、 ドアを開ける。
「お前ら、時間を考えろ。俺は大家だって事忘れてねぇよな?お、い、ちょっ、まてって、咲希!圭太郎!」
足取りのおぼつかない2人組は俺を押しのけ靴を脱ぎ捨てると寝室のドアの前を通り過ぎ、仕事場のドアを開けた。
「悪いな。店はもう閉めたんだ。修理して欲しい時計があるなら明日もってこい。」
「もーっ。冷たいなー!あーちゃんてばーっ!振られたあたしを慰めてーっ!」
「酔ってるな?」
このベロベロに酔っ払った小柄な女の子咲希は、俺が大家をしているこのアパート<紫陽花>の三階に住んでいる21歳美容師見習いだ。
いつもはしっかりカールしている栗色のセミロングも今は乱れに乱れている。
「晶(あきら)さーん!俺、また振られたーっ。もう立ち直れねーよーうぁぁー」
こいつは圭太郎、2階に住む23歳。
黒髪短髪、185cmの長身と引き締まった体格を見ればわかるようにスポーツジムのインストラクターをしている。
ただ、見た目に反してメンタルの弱さはガラス以上だ。
「はぁ..」
今のところ<紫陽花>の住民はこの2人だけ。
アパートと言っても1階ごとに1部屋の4階建てで1階は俺の家兼仕事場になっているため、空いているのはあと1部屋だけだが。
どこにでもあるありふれたアパート。
ただ一つ、住民の恋愛対象が同性であることを除いては。
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