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落ち着け、俺
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バンッ
すぐさま窓を閉める。
足が震えた。
しゃがみ込まないように窓に手をつけ体を支える。
「落ち着け、俺。何かの見間違い。あいつらの失恋話を聞いたせいで思い出しただけだ。」
深呼吸だ、深呼吸。
だめだ。
暴れまわる心臓のおかげで深呼吸もろくにできやしない。
恐る恐るまた開けてみる。
やはり倒れているのは2年前別れたはずの男だった。
「うそだろ...」
スーツに包まれたその体はピクリとも動かない。
どうする 。
とやかく考えてる場合じゃないよな。
「あぁ、もう!くそっ!」
扉を開け、駆け寄る。
息は…してる。
してなかったら大問題だ。
救急車、呼んだほうがいいのか。
額に当てた手が…熱い。
熱だな。
「昨日の夜は雨、だった」
そういえば、病院嫌いだったよな、こいつ。
隣のアパートの佐々木さんに来てもらうか。
佐々木さんは隠居中の元医者だ。
親切な人で、昔からよくお世話になっている。
はぁ、ため息が出た。
「おい!聞こえるか?立て!」
「う...」
「とりあえず服替えねぇと」
腕を持ち上げ肩にかけて立ち上がる。
「重っ」
ふわりと香ったシトラスの懐かしい匂い。
少し胸が締めつけられた……ような気がした。
でもこれは、驚き過ぎて心臓が痛いだけ。
それだけ。
身長は俺より10cmも上で体格もいいこいつを運ぶのは、貧弱な上、腰を痛めた今の俺には重労働だった。
なんでなんにも持ってないんだ?
色々と聞きたいことはあったが、とりあえずベッドへ運び、まだ濡れているスーツのジャケットを脱がせる。
シャツのボタンに手を伸ばすのは少し躊躇われた。
でも、やるしかない。
「うぁっ」
不意に力強い手に手首を掴まれた。
バッと顔を見上げる。
雨と汗で張り付いた色素の薄いくせ髪の間から覗く綺麗な薄茶色の瞳が、じっとこちらを見据えていた。
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