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忘れられない
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佐々木さんの診断はただの熱。
ただ、俺のことを覚えていないと話していた巽はどうやらその他のことも少し曖昧なところがあるようだった。
「彼は記憶障害みたいだね。熱が下がったら、病院に連れて行ってあげなさい」
「はい。ありがとうございます」
佐々木さんが帰った後、何をするでもなくぼんやりとする。
薬を飲んで眠る横顔は穏やかだった。
俺のことを覚えていない巽。
薄情なやつだ。
俺は出会ってから8年間隣にいて、別れてから2年間忘れたことなんてなかった。
中学卒業までは遠い親戚の家に居候させてもらい、高校入学と同時に祖父の家であるこのアパートに引っ越してきた。
高校1年とはいえ、ほとんどの人が小学校からの同級生だったからか、もともと人見知りだった俺は馴染めずにいた。
祖父に負担をかけたくなかったので部活にも入らなかった。
結局、誰とも話せないまま、数日が過ぎた。
これから3年間1人なんじゃないかと嫌な考えが頭をよぎった頃だった。
やたら目立つ転校生がやってきたのは。
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