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卒業式
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卒業式。
目に涙を溜めるクラスメイトたちと肩を叩き合う。
巽がいてくれたおかげで友達がたくさんできた。
お前がいなかったらこうやって過ごすこともできなかっただろう。
涙は出なかった。
一生の別れとかじゃないんだ。
また同窓会で会える。
家の近いやつもいる。
少し先を歩く背中。
たくさんの人に囲まれた大きな背中。
出会った時より随分大きくなったような。
出会った時も十分大きかったけど。
お前の隣にいるのは正直苦しい時もあったよ。
校門の前でこちらを振り向いた瞳が俺を捉える。
たくさんの蕾を付けた桜はまだ咲かない。
「また連絡する」
なんて言って、軽く手を上げた。
横をすり抜けるようにしてすれ違う。
今の、変だったか。
背中に視線を感じたが、振り返らない。
多分もう限界だ。
これ以上一緒にいたらだめ。
そんな無根拠な確信があった。
中学の時も少し気になる人ならいた。
でも、今はあの時と比べ物にならないほど参っている自分がいる。
大学に入っても少しは会えたらいい。
巽の通う大学はここから少し離れた名門私立。
俺は近所の公立。
気持ちがばれて失ってしまうくらいなら、この、心地よい関係がずっと、ずっと続けばいいと思う。
あれ、泣かないと思ってたんだけど。
滲んできた視界を振り切るように歩調をはやめる。
おかしいな。
別に一生の別れとかじゃないのに。
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