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合格発表
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合格発表の日。
よかった。
自分の番号を何度も確認する。
私立なんて行けないから、落ちていたら本当に笑えない。
歩いて行ける距離に大学があってよかった。
まだ小学5年の弟とじいちゃんだけを置いて一人暮らしなんてできないからな。
家に電話して合格したって報告しよう。
携帯に目を落とした時だった。
なんで?
嘘だ。
でも、そこにあったのは見覚えのある顔。
ここにいるはずなんてない。
何度瞬きしても消えることのないその姿を見つめる。
頭の中が真っ白だった。
ああ、もう。
棒立ちになった足を無理やり引き剥がし背中を向ける。
巽がこちらに気づいていようがどうでもよかった。
しばらく会わないと思っていたのに。
心の準備ができていないまま話してしまえば何を口走るかわからない。
帰ろう。
足を踏み出すと早い足音が背後から近づいてくる。
「逃げるな」
ビクッと肩が震えて、胸が痛くなった。
出会ったばかりの頃とは違う、低く、耳障りの良い大人の男の声。
「少し話がある」
振り返ることができないまま、俺はゴクリと唾を飲み込んだ。
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