アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
ごめんなさい
-
近所のひと気のない公園のベンチに並んで座る。
シトラスの香りがした。
苦しい。
苦しい。
隣のこいつに俺の心臓の音が聞こえるんじゃないかと、少し本気で、心配になる。
「話ってなんだよ、なんでお前この大学受けたんだよ」
絞り出すように沈黙を破る。
「お前、そんなに俺のこと嫌い?おかしくねぇか最近。卒業式の時も…」
3年間は長い。
なんでもお見通しってわけだ。
「そんなわけねーだろ」
目を逸らす。
今、絶対に、巽はあの透き通った薄茶色の瞳でまっすぐ俺のことを見てるに違いないから。
今、目を合わせちゃいけない。
抑えられなくなる。
何もかもぶちまけてしまいそうだ。
逃げないと。
今はここにいちゃだめだ。
「それだけか、話」
動揺を隠せてるのか、俺。
「ああ」
あっけなく引き下がったので油断した。
巽を見て言う。
「なら、俺は帰るけど…………っ!!」
あいつはまだこちらを真剣な顔つきで見つめていた。
なぜだか、少し困ったような瞳で。
初めて見たその表情に心臓がぎゅうと締め付けられる。
ばっと顔を背ける。
ダメだ。
抑えてたのに。
目頭がどんどん熱くなってきた。
走ってこの場から逃げようと立ち上がる。
が、すぐに力強い手に腕を掴まれた。
服の上からでもわかる熱い体温。
「はな、せ」
強く言ったつもりだった…のに、実際に聞こえてきたのは弱く、震えた自分の声だった。
「お前は何が嫌なんだ?男を好きな自分か?相手に知られて嫌われるのが嫌なのか?」
静かな声が聞こえる。
「………な、に言って…」
な、んだ、ばれて、るじゃないか。
バカみたいだ、俺。
せきを切ったように涙が溢れてくる。
「……うっぐ…ぁうっ…ご、ごめん」
「で?どっちなんだよ」
「………え?」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
16 / 39