アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
3年間
-
醜態を晒しきったせいだろうか、開き直って巽の顔を正面から見据えることができる。
出会った頃よりもたくましくなった体。
彫刻のように綺麗な男の手。
何よりその存在が人を惹きつける魅力を持っていることを俺は知っている。
初めてじゃないだろうか、俺からこんなに見つめるのは。
「わ、わかってるって言ってただろ」
手を離し、急にそっぽを向く巽。
その整った横顔に一瞬目を奪われる。
…え?
巽が、あの巽が、恥ずかしがってる?
表情は見えないが、なんとなく、耳が…赤い。
「お前がこんなに俺のこと見るの、初めてなんじゃねえ?」
ちらりとこちらを伺うようにして言う。
「……」
「……」
不意に後方から俺を呼ぶ大きな声が聞こえた。
「見つけたーっ!じいちゃんに部屋の片付けしなさいって言われた!早く片付けないと友達と遊べないよーっ!早く帰ろー!」
タイミング悪く、小学5年になった弟、礼(れい)が走ってやってきた。
そのまま礼は俺の右手を掴み、引っ張る。
すっと伸びた巽の力強い手が俺の後頭部にかかり、ぐいと引き寄せられた。
巽の瞳がまた近づく。
「…!?ちょっ、礼いる、からっ」
思わず目をつむる。
耳元で低く、優しい声が聞こえた。
「勝手に逃げるなよ。俺は3年間待ってやったんだ」
……え?
目を開ける。
「…電話する」
ぱっと手を離すと、ひらひらと手を振りながら、巽は公園から出て行った。
初めて見た、あんな巽。
俺は礼に手を引かれながら、ベンチの前に呆然と立ち尽くしていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
21 / 39