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わからない
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袋の中身を取り出してみてそれは確信へと変わる。
取り出したものを洗面台に置き、シャツを洗濯機へ放り込む。
何か食べやすいもの作っておこう。
振り返ると巽が立っていた。
ビクッと肩が揺れる。
「…驚かすなよ。どうした?」
「名前を聞いていなかった」
「あ…」
言ってなかった、のか。
あまりに自然に話していたせいでそんな事も教えていなかったなんて気がつかなかった。
お前もそういう事は先に聞けよと少し睨んでみる。
「…晶。久地晶」
「字はどう書くんだ?」
「久しいに、地面の地、水晶の晶で久地晶」
「晶、か」
その声が、俺の名前を呼んでいる。
何度夢見たかわからない。
また、呼んでくれた。
それだけが、頭の中を一杯にした。
巽はそのまま無言でこちらをジッと見てくる。
「……」
「……」
「…何?」
「いや…」
だから何と口を開こうとした時、裸足の足の甲に温かいものが落ちた。
思わず下を向くとポロポロと水滴が落ちて床が濡れていく。
泣いているのだと気づいたのは十数滴の水玉を見つめてからだった。
「…あれ、俺泣いてるのか」
どうしていいのかわからないまま、顔を上げると案の定、巽が怪訝な顔でこちらを見ている。
「ほら、はやく寝てろ」
なるべく声を張って震えないように洗面所から押し出す。
ベッドへ追いやると洗面台の鏡を見た。
そこには目を真っ赤にして涙を流す自分の姿があった。
泣くのは随分久しぶりな気がする。
絶対変な奴だと思われたな。
黒い髪、黒い瞳、身長はソコソコあるのに物足りない体格、髪は少し伸びたが、俺も何も変わってない。
ちらりと洗面台に置いた懐かしいものが目に入る。
「……お前の気持ちがわからない」
呟いた声は酷く震えていた。
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