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泣き顔 巽side
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洗面所を追い出され柔らかい布団に入る。
立て!と怒鳴られ、細い腕で支えられた。
俺の服のボタンを外していく腕を掴むと怒ったような困ったような目でこちらを見ていた。
切れ長の瞳を見て、知らない顔だと思った。
俺のことを知っているのかと聞けば、ふざけるなと怒りながらその表情が酷く歪むのを見た。
それから少し意識を手放し、次に目を覚ますと、ただ一点を見つめる男が先程と同じ場所にいた。
声をかけるのを躊躇うほどにその姿は儚く見えた。
名前を聞いていないなんて気がつかなかった。
それほど自然に話していたことに驚いたが、それは間違いなく俺が忘れている人なのだという確証をもたらした。
「…晶」
数分前に教えられた名前を呟く。
洗面所で名前を呼んだ時、目の前で急に涙を零しはじめた晶。
俺が泣かせたのか。
目の前で頭をガクリと下げ、割れた髪の隙間からうなじが見えた。
目の前の手のひらを見つめる。
あの時、俺は確かにその肩に手を伸ばし、引き寄せようとしていた。
無意識に動いた手を反射的に戻して、自分の行動がわからずにただ驚いた。
なぜだかわからない。
泣いているとはいえ、普通は抱きしめたりしないだろう。
恋人でもない限り。
でも、放っておけない。
…そして、俺はあの泣き顔をよく知っている。
あの涙を見たときにそう、感じた。
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