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美智子さん
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フワフワとした気分のまま、数日が過ぎた。
礼が熱を出したとじいちゃんから連絡が入り、予定を切り上げて大学の門へと向かう。
門を出ると赤いポルシェが目に留まった。
大学に入ってから見るのは初めてのだった。
「車、巽のこと待ってるんじゃない」
自分でも感じの悪い声が出たと思う。
「なに、妬いてんのか」
俺を覗き込んでくる巽から顔を思い切り背ける。
分かってはいるけど、どうしてもそういう、まあ、なんて言うんだ、…付き合っている、それらしい雰囲気になるのを避けてしまう。
「…っな、なんで俺が」
「心配するなよ、あの人は美智子さん。俺の姉貴みたいなもんだって言ったよな?晶のことも知ってる。迎えが来るって事は多分親父が俺を呼んでんだろ。気をつけて帰れよ、悪い奴について行くんじゃないぞ」
頭を軽くはたかれる。
「言ってろ」
信号を渡り、振り返ると巽が車に乗り込むところだった。
運転席に座る艶やかな茶髪の綺麗な女の人、美智子さんと目が合う。
会釈するとニコリと微笑まれた。
巽とよく似た茶色の瞳。
そこに浮かぶのは好意、ではなく、敵対心だと感じるのは気のせいなのだろうか。
どんよりと気分が下がる。
「やっぱり、な」
巽は気づいているのか、いないのか。
「…気づいてそうだけど」
少しスッキリとしないものが心の隅にわだかまる。
俺はそれに蓋をした。
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