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誕生日
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そのまま一年が過ぎた。
なにも、進まないまま。
俺はじいちゃんの仕事を手伝い始め、巽は会社に呼ばれることが多くなった。
それをいい事に逃げているのは俺だけだと思っていたけど。
告白したあの日にキスをしてきたあの巽が、何もしてこないのがどこか不安で怖い。
自分からは言えないなんて言っている場合じゃないのかもしれない。
巽と過ごす時間はあっという間に過ぎてゆく。
このままじゃいけない。
それは、わかってる。
もうそろそろ、覚悟を決めないと。
後悔されるよりも前に、愛想を尽かされてもおかしくない。
礼が中学に入ってからは部活で忙しくなってかまってやることも少なくなり、仕事を手伝う時間が増えていった。
店の手伝いは面白い。
「時計、作ってみるか」
そう言われた時にふと、巽の顔が浮かんだ。
カレンダーを見遣る。
もうすぐあいつの誕生日だ。
6月19日まであと一ヶ月。
去年は浮かれ過ぎて忘れてしまったから、今年はちゃんとしたものを贈りたい。
去年は確か…
キスをされた。
代わりに年の分だけさせろとかなんとか言って…
べ、別に今年もされるわけじゃない!
ちゃんとプレゼント渡すし。
変なことを考え始めた頭を左右にブンブンとふり、雑念を追い払う。
「…それより、はやく頼まれたもの買いに行かないと」
玄関を出て、赤く染まり始めた空に歩調をはやめる。
梅雨の気配を含み、しっとりとした風が吹き抜けた。
最近、自分でするときに指を挿れてみた。
違和感しか感じなかったけど、癖になりそうな気がした。
思っていたより飢えているような自分に戸惑って、巽はどうしてるのかと考えて。
したいのに、怖い。
ぐるぐると考える頭の中がまとまることなんてないように思える。
もう、どうすればいいんだよ!
心の中で思い切り叫んで憎いほど綺麗な空を睨んでみる。
赤く滲む空から、何も返ってはこない。
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