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涙のあと
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気が付くと窓の外は真っ暗だった。
涙はまだ流れている。
腕時計を握りしめ、洗面所へ向かう。
不意に、背後から声がした。
肩がこわばる。
「不用心だよー!いくら男だからって、玄関開けてちゃダメだってー!あーちゃん弱そうだもん」
必要以上に力を入れた肩は少し引きつったように痛んだ。
「…俺の心臓止める気か、お前が一番の危険人物だな」
「ちょっとひどーい!せっかく謝ろうと思って来たのに!」
ぷいと顔を横に向けた咲希が弾かれたように目を見開くのがわかった。
「うわ、何この眠れる森のイケメン」
かなりの音量で吐き出された声に思わず耳を塞ぐ。
巽をまじまじと見つめた瞳が、またこっちに向き直る。
「あーちゃんってやっぱりメンクっくっ……なひふんのよー!」
慌てて騒ぎ立てようとする口を抑える。
「少し黙れ、後で話す」
「訳ありかぁ」
楽しいと言わんばかりに釣り上がる口角に嫌な予感しか湧かない。
ピンポーン
この時間の訪問者なんて考えられるのはあと一人だけだ。
仕方なく玄関を開けた。
「お前らは帰る場所が間違ってる。しかもなんで仕事終わる時間まで一緒なんだよ」
申し訳なさそうに眉を下げながらも圭太郎は迷いなく靴を脱いでいく。
「お詫びに今日は夕飯作りに来たんだ」
「ちょっと圭ちゃん!早く来て、見て!あーちゃんがイケメンに悪いことしようとしてたの!」
「本当に?!」
「おい、誤解を招くようなこと言うんじゃない!」
2人とも、俺の泣き腫らしてみっともないことになっているだろう目のことには触れてこない。
ありがとな、咲希、圭太郎。
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