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どうしたい
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「…そうだよ。2年前に別れた。なのに今日の朝、店の前に熱出して倒れてて、その上、記憶がないらしい」
「ぶっ」
咲希が圭太郎に向かって水を吹き出す。
「ゴホッゴホッ」
ジャガイモを詰まらせたらしい圭太郎は胸を必死に叩いている。
「なんでそれを先に言わないの!?」
「悪い」
「悪い、じゃないよ!あーちゃん!どうするの?病院は?」
「いや、巽、あいつが病院には戻らないって言うから…」
ようやく落ち着いた圭太郎が髪から水を滴らせながら言う。
「でも家族の人とか心配してるんじゃないかな」
「……それもそうだよな。しかもあいつ、今、紀田コーポレーションの社長やってるんだし…やっぱり誰かに、」
「ぶっ」
「ゴホッゴホッ」
「ちょっと待ってよ!なんでそんな人と知り合い…!じゃなくて、彼氏だったんだよね。」
「一応」
「…どうするの」
いつになく真剣に見える咲希の表情。
顔を真っ赤にして胸を叩く圭太郎の背中をさすりながら考える。
俺はどうしたいのか。
あいつはどうしたかったのか。
「……分からない、けど…」
どうしたいんだろう。
「あー、ごめんっ。なんかいろいろ突っ込み過ぎた!突然のことなんだし、ゆっくり考えてもいいと思うよ。落ち着いたら洗いざらい話してもらおーっと」
「…ありがとう」
「やだなぁ、しおらしいあーちゃん、なんか可愛い。ねえ、圭ちゃん」
「な、なんで俺、」
「思わないの?」
心なしか少しキツさのある言い方だった。
一瞬、ピリッとした空気になる。
突然訪れたそれに、少し混乱する。
なんで今、ここでそういう言い方になるんだ。
「なんでお前は圭太郎に時々厳しくなるんだよ」
「…あたしはもっと圭ちゃんに自分の意思を持ってもらいたいの。毎回毎回、あっさり引き下がりすぎなのよ、特に恋愛!もう、そんなことばっかりしてたらあたしが言っ…」
「咲希」
滅多に怒らない圭太郎の低い声。
「…ごめん、言いすぎた」
「…いや、いいよ」
「お前らでもそういうこと言い合うんだな」
何度か喧嘩の相談はされたものの、目の前でこういう空気になるのは初めてだった。
喧嘩をするなんて普段穏やかな2人だけに、少し信じがたいものがあったが、実際目の前で見てみるとこういう言い合いはお互いの信頼関係があるからこそ、できるものなんだろうと思えた。
スプーンで皿の隅のご飯粒を丁寧にすくいながら咲希はさっきのキツさは何処へやら、少し笑った。
「まあね。付き合い長いから」
その言葉の先は、きっと、
…幸せになってほしい。
隠れた優しさに気づいているのいないのか、圭太郎も少し笑った。
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