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可愛い人 咲希side
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電気をつけずにそのままベッドへダイブする。
あーまたやっちゃった。
酔った勢いであーちゃんの部屋で飲んで泣いて……
謝りに行ったら見知らぬイケメンがいてびっくりした。
すぐに予想はついたけど。
泣き腫らした目で、その恋が決して幸せと言える終わり方をしなかったことも。
きっとあーちゃんはすごくその人のこと好きだったんだよ。
昔のことなのに、それだけ泣けるってことは、それだけ大切な恋だったんだよ。
こっちがもらい泣きしそうになった。
記憶喪失だとは思ってなかったけどね。
…でも、なんかちょっと悔しくなった。
圭ちゃんの気持ちも知ってるから。
あたしは好きになったら思いっきり攻める方だからかもしれないけど、圭ちゃんは好きな人ほど手を出せなくなるタイプなんだ。
もちろん、誰を好きになって、誰と付き合おうともあーちゃんの自由。
それは分かってるけど、あたしは一度でもあんな風にあーちゃんを泣かせた人より、圭ちゃんの方がずっと、幸せにできると思うよ。
……なんて、元カレのことを知りもしないあたしが言えることじゃないんだけどね。
口は、見た目に反してちょっと乱暴な時もあるけど、優しい人だ。
恋を諦めてるようなあーちゃんの顔はもう見たくないんだ。
出会いを思い出す。
あたしがあーちゃんと出会ったのは2年前、あーちゃんのおじいさんが亡くなった後。
初めの印象は最悪だった。
無愛想な、ボサボサの髪の男。
大家がこんな人なんて。
あーあ。幸先悪いなー。
安くて外観が可愛いから選んじゃったけど。
18で美容の高校を卒業して、そのまま小さな美容室で研修生として働くことになった。
「飯島さん、これが鍵。スペアは俺しか持ってないから」
「あ、どうも。………あの、私、美容室で見習いしてるんですけど、髪、切ってもいいですか。ほんと不躾にすみません」
「……なんで」
「たぶん、久地さんの髪ってすごく細いんですよ。放ってるから、絡まってて、すごく勿体無いです」
「別に構わない」
「…曲がりなりにも時計修理屋だって、接客業です!そんなことしてたらお客さん来なくなっちゃいます!」
あ、言っちゃった。
ビクッと肩を揺らすと久地さんは渋々と頷いてくれた。
「おじゃましまーす」
その荒れた格好とは裏腹に、綺麗に片付けられた部屋に驚く。
リュックサックの中から練習用の一式を取り出し、洗面所を借りて切る。
うわ……
ボサボサの髪に隠れていたのはすごく綺麗な切れ長の瞳だった。
もったいない。
丁寧にブラッシングして、と。
「すごく、きれ、かっこいいじゃないですか」
男の人に綺麗は失礼かな。
「大学時代に戻ったみたいだ」
ポツリと呟く声が聞こえた。
「そうなんですか。じゃあきっと昔はモテモテだったんでしょうね」
「女の人にモテてもしかたなかったし……」
文字通り、口を滑らせたらしいその人は
しまったというように自分の手で口を塞ぐ。
何これ、可愛い。
そんなに、驚きはなかった。
なんとなくそんな気がしてたから。
同類の勘ってやつ?
「そうなんですか。…私も同じです。あたしが好きなのは女の人」
それから、少し話をした。
話しているうちに気がついた。
この人は無愛想というよりも、人見知りだってこと。
そして、砕けて話すと物凄く、かわいく見えること。
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