アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
夢へ
-
詳しくは聞かないと言いながらも巽が起きまいかとソワソワしていた咲希を圭太郎に連れ帰ってもらい、片付けをする。
蛇口をひねり、勢いよく流れる水に白い器をさらした。
じいちゃんと、弟と、使っていた食器。
今は、咲希と圭太郎と。
そんなに月日は経っていないはずなのに、家族三人で囲んでいた食卓の様子がずっと前のことのように感じる。
……ああ、もう!
俺のベッドで寝息を立てている男のせいで今日は感傷的になり過ぎる。
スポンジもだいぶ擦れてきたし、洗剤も買いに行かないと。
明日、買いに行こう。
明日。
巽が目を覚ましたらどうすればいいんだろう。
記憶が戻ってたりしたら?
そんなに都合よく戻るわけないか。
泣いているところを見られてしまった。
ごちゃごちゃとパンク寸前の頭の中とは違って体は無意識に日頃の習慣を行なっていく。
なるべく巽が視界に入らないように。
一通りの家事を終え、仕事場に敷いた布団に入っても頭は冴えきったままだった。
早く寝よう。
早く寝て、明日は今日の分の仕事も終わらせなきゃいけない。
斎藤さんの時計は厄介な壊れ方をしていた。
明日も普段通りの一日だ。
いつも同じ。
余計なことを考えるな。
いくら考えたって、俺に出来ることなんて一つもないんだから。
ざわめき続ける心を抑えて。
早く、
早く、夢の中へ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
34 / 39