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プレゼント
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最近よく夢を見る。
それだけなら何も問題はない。
内容が内容なだけに、真剣に困ってしまう。
思春期の男子高校生さながらの夢。
まさかこの年齢になってこんな夢に悩まされる時が来るとは思わなかったな。
何しろ、頭の中がピンクで染まっていただろう高校時代は至って純情なまま、通り過ぎてしまったわけで。
今ならあの頃の同級生の話がよくわかる気がする。
悪かったな、うるさいとか思って。
心の中で元クラスメイトに謝罪した。
何もしないから考えすぎるんだ、作業をすればそんなこと考えなくて済む。
今日は午前が休講だからようやく続きが出来る。
ちゃんと進めないと。
顔を洗って階段を駆け下り、一階の作業場に着くとじいちゃんがもう座って何かをしている。
「じいちゃん、おはよう」
「ああ、おはよう。続き、やるか」
「うん、よろしくお願いします」
高校から時計の仕事は手伝っていたから自信はあった。
そんなもの、すぐに砕け散ったが。
組み立てるだけなのに難しい。
細かい部品は、数が多く、少しの歪みも許されない。
じいちゃんに教えてもらいながら、作業を進める。
バンドと時計本体のケースをつなぐラグの部分で少し失敗して歪んでしまった。
見た目は悪いが、ちゃんと動いている。
リューズと呼ばれる横についたネジのようなものを回して時間を調節する。
少し大きめで、些か古風な時計。
売っているものはもっと精巧で、緻密な時間を刻む。
時計をつけない人も多い。
何の役にも立たないけど、なんでも持っているだろう巽にこれ以外、あげられるものが思いつかなかった。
そうは言っても、自分の組み立てた時計が動いているのを見ると、なんとも言えない充足感が胸に溢れた。
そして当日。
俺は子供のように胸を高鳴らせる。
反応が楽しみだった。
がっかりさせてしまうかもという怖さもあった。
大学の門で待っていると授業から解放された学生たちのグループが楽しそうに出てきた。
少し首を縮めて門に寄りかかる。
俺は家の手伝いが忙しいため、サークルには所属していなかった。
同い年なはずなのに、全く違う世界の人たちに見える。
別に、羨ましいと思うわけじゃないけど、巽はその、違う世界の人に時々見えてしまうから。
「遅いな」
15分が過ぎた。
「悪い!」
たくさんの包みを抱えた巽が門から出て来る。
…当たり前だ。
予想はしていたけど、それ以上。
綺麗にラッピングされた鮮やかなプレゼントを見て、とっさに自分の紙袋を背中へ隠してしまった。
いつの間にか門の前に来ていた黒崎さんが巽の抱えるプレゼントを受け取る。
黒崎さんは巽の高校時代から時々車で送迎をしていた、お目付役兼ボディーガードだ。
そんな大仰なものではありませんと笑いながら言った黒崎さんはどこからどう見ても隙のない、ただの会社員ではないような雰囲気を漂わせている。
いつの間にか正面に立った巽が無言で手をこちらへ差し出す。
それの意味することはわかっていたが、ためらう。
どうしよう。
逃げ場はないのに体が動かない。
しびれを切らしたように巽は一歩こちらへ近づいた。
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