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三話
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side:矢口
幼い頃
自分で言うのもなんだが
近所のおばさんたちに
相当可愛がられていた
それはもう可愛がられすぎるくらいに
会うたびにお菓子やらをたくさん貰い
頭を撫でられたり肌を触られたり
普通なら喜ばしい行為なのだろう
だけど幼い頃の自分にはそれが恐怖でしかなくて
中学に上がる頃にはすっかり女性恐怖症となっていた
女性と関わりたくないが故
中高付属の男子校へと入学した
女性のいない生活は楽しかった
勉強も楽しく感じ
積極的に取り組んでいた
そのかいあってテストは良い点数
特に英語の点数が学年一位になる程だった
将来はこの学力を生かせる職に就きたい
そう思い始めたのが中三の夏
この時から俺は教師を目指し始めた
恋愛なんてせず勉強に取り組み
あっという間に高校生活が終わり
俺は教師になるため大学に入学した
大学は男女共学だったが
女性とは最低限の接触しかしなかった
そんなこんなで22歳のとき
採用試験に合格
俺は伊松見学園高等部へ配属された
そんな右も左もわからないような時期に
出会ったのが更科先生だった
更科先生は思ったことをずばっと言えて
間違ってることもすぐに正せる
自分にはないものを持ってる更科先生
そんな更科先生はすぐに俺の憧れとなった
いや、恋をしたことがない俺にとっての
初恋なのかもしれない
更科先生のことが知りたくて
暇さえあれば声を掛けていた
更科先生は表情ひとつ変えずに
俺の話に相づちを打ってくれた
嘘だって気付いた今でも嬉しく思う
そんな更科先生に嫌われてるって
気付いたのはついさっき
食堂の自販機に飲み物を買いに行った時
本浦先生と更科先生の会話を聞いた
『嫌いですよ。すごく』
あんなにしつこく話しかければ嫌われる
そんなのわかってたのに
何故だかショックを受けてしまった
別に好かれてるとは思ってなかったけど…
それと同時に
更科先生が嫌いな俺と
話をしてくれてたことに対しての
申し訳なさが込み上げてきた
机に顔を伏せ
今までの言動を思い返す
失礼なことばかりしてきたな…
今すぐにでも謝りたい…
でも謝るのも迷惑だろうな…
どんどんネガティブになっていく
もう更科先生には最低限声を掛けないようにしよう
会話も最低限しない
大丈夫。
大学でも出来たんだ
今でも出来る
ここで俺の初恋は幕を閉じる
わけもなく
気づいたら目で更科先生を追ってた
目が合えばもちろんそらす
じっと見つめてたら
気持ち悪いと思われてしまう
たまに、見かけた時だけでいいんだ
俺が更科先生に声を掛けなくなって
一ヶ月がたった時
更科先生からは
ただならぬオーラが出ていた
今月のテスト担当更科先生だからかな
煮詰まってるのかな
前までの俺なら手伝いに行くんだけど
イライラしてる更科先生にとって
その行動はさらにイライラを
増させてしまうに違うないから行けない
そんなこんなで更科先生を見つめていれば
顔を急にあげた先生と目が合った
反射的に俺は目をそらしてしまう
その瞬間
更科先生が勢いよく席をたち
ズカズカと職員室を出ていってしまった
職員室内の張り詰めた空気も
ここで一旦なくなる
俺は今のうちにコーヒーを淹れようと
給湯器へと駆け寄り素早くコーヒーを淹れる
そして淹れたコーヒーを
更科先生の机のはしっこに置いた
気づかれなかったらそれでいい
あとで自分で飲もう
そう思いながら自分の机で
ワークの丸付けをしているとドアが開く音がした
顔をあげなくてもすぐに更科先生だとわかった
更科先生は一直線に自分の席に着き
パソコンを立ち上げる
その時、机の端にあるコップに気づき
コップを手に持った
更科先生はすぐに顔をあげ
俺の顔を見つめた
思わず顔をそらしてしまったが
俺はもう一度顔をあげ
更科先生に小さく頭を下げた
その時の更科先生の表情は
いつもの無表情なんかじゃなかった
見間違いじゃなければたしかに
更科先生は俺に向かって微笑んでた
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