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六話
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side:更科
矢口先生を家まで送った翌日
いつも通り少し早めに職員室に入る
先生方はまだ来ていないらしいが
何故だか電気はついている
気にせず自分の机に向かえば
机の上に湯気のたつコーヒーと
昨夜、矢口先生に貸したハンカチが綺麗に畳まれて置いてあった。
ハンカチの下から小さな紙切れが出ており
ゆっくり引き出して見てみれば
"ありがとうございました。 矢口"と
丁寧な字で書いてあった
矢口先生はもう学校に来てるらしい
しかし職員室全体を見渡すも
矢口先生の姿はない
英語科準備室か…
そう思い、俺は職員室を出ようとした
そこで矢口先生が淹れてくれたと思われる
コーヒーの存在を思い出した
俺は再び机に戻り
少し覚めたコーヒーを一気に飲み干した
英語科準備室に矢口先生の姿はなかった
鍵すらも開いてなく
矢口先生がここに来た形跡はない
もう職員室に戻ったのかと
廊下を歩いていれば
普段使われていない
空き教室の窓側の席に人影が見えた
ちらっと覗いてみれば
そこには昨日のように
机に伏せて寝息をたてている矢口先生の姿が
物音を立てないように近づき
静かに矢口先生の前の席に腰をかける
まだ時刻は午前六時半過ぎ
俺より早く学校に来るために
普段より数時間早く起きたんだろう
毎回、矢口先生が学校に来るのは
遅刻はないが結構ギリギリだった
寝たのも日付が変わった頃だろうし
昨日も居眠りするくらいだ
それだけ疲れているんだろう
その疲れてる原因に
俺のことが入ってたりするんだろうか…
普段掛けてる眼鏡を掛けていない
成人男性にしては幼い寝顔を見つめる
無意識のうちに手が矢口先生の頭に伸び
柔らかな髪の毛に触れた
「っ…ん…」
矢口先生の声に俺は直ぐ様手を離す
しかし矢口先生が目覚めることはなかった
しばらく矢口先生の寝顔を眺めていたが
まだ生徒が登校してくるまで時間がある
俺も少し寝ようかと思い
俺は座ったまま窓に寄っ掛かる
そしてゆっくりと目を閉じた
「…更科先生」
そう俺の名前を呼ぶ声と共に
肩を叩かれ俺は目を覚ます
一番最初に視界に入ったのは
先ほどまで寝ていたはずの矢口先生
俺が起きたことがわかると
「もう七時半過ぎですよ?」と首を傾げた
どうやら一時間弱寝ていたようだ
「おはようございます」と挨拶をし
俺はゆっくり立ち上がる
そしてそのまま腕を上にあげ
背筋を伸ばしあくびをした
「職員室戻りましょうか」
そう声をかければ
矢口先生は勢いよく立ち上がり
その勢いで矢口先生の座っていた椅子は
ガタンっと大きな音を立て倒れてしまった
「すっ、すみませんっ…」
そう言い矢口先生は慌てて椅子を元に戻す
前までの俺だったら
うぜぇとか思ってただろう
だけど今はそう思わなかった
逆に可愛らしいと思ってしまう
「よくあることですよ」と声をかければ
再び「すみません」と謝られた
謝るのが癖になってるんだろうか
それとも俺が相手だからか
そんなことを考え静止してると
「更科先生?」と矢口先生の声
ハッとして矢口先生を見れば
俺を心配そうに見つめていた
「すみません。戻りましょうか」
俺はそう言い
矢口先生と共に空き教室から出た
「ハンカチありがとうございます
洗ってくれたんですね。アイロンも」
「いえっ…こちらこそ…
昨夜は、ありがとうございました…」
職員室に戻るまでの道のりを
矢口先生と並んで歩く
と言っても矢口先生は
俺との距離大分を保って歩いていた
「いつでもお送りしますよ」
「あ、ありがとう…ございます…」
冗談だと捉えられたのだろうけど
本気で毎日送ってあげてもいいと思った
別に矢口先生といると楽しいとか
そういうわけじゃなくて
なんだか少し癒される気がする
前まではストレスの
原因でしかなかったのに
逆に今では矢口先生がいない方が
ストレスになりそうだ
そんなことを考えていると矢口先生が
「あの、昨日のこと…なんですが…」と
顔を伏せがちに小さな声で言った
「昨日?」
「…しょ…食事に行こうっていう…」
「あぁ」
ちゃんと考えてくれてたんだと
相当嬉しく感じた
いや、でも断られる可能性もある
その可能性の方が高いだろう
断られるという考えだけが頭を駆け回る
断られた時の気のきいた返しを考えていた
その時「今夜とかいかがですか?」と
矢口先生が言葉を発した
「ですよね…て、え?」
予想外の言葉に
情けない声をあげてしまった
「あ、いや、あのっ、無理なら、その
大丈夫なんです、えっと、えっと…」
矢口先生は俺の「え?」という言葉を
「は?なに言ってんのこいつ」
そんな意味で捉えたのだろう
しかし実際は当たって砕けろで
告白した子にOKをもらった時の「え?」だ
つまり、嬉しさ混じりの「え?」
「ごめんなさいっ…忘れてください」
「いいですね。じゃあ今夜」
俺は食い気味にそう言った
矢口先生はさっきの俺と同じように
「え?」と言葉を発した
「何が食べたいですか?」
そう問いかけた時
八時を知らせるチャイムが鳴った
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