アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
あの人
-
部屋を出る時に駿河に手を引っ張られた。腕ではなく手、だ。一体何なんだろうか。
どうせ特段意味は無いんだろうけれどもそれでもこんなことするキャラでもないので少し戸惑う。
「……どうしたんですか」
「嫌か?」
「別に…何か、怖いです」
「あはは、何となく、だよ」
珍しくいつもの意味あり気な笑顔ではなく子供のような綺麗な笑顔で笑っていた。そして、するりと手を解きながら最後に、俺の小指を親指と人差し指で少し撫でた。
指が離れた後も何となく駿河の指の感覚が小指に残っていて意味もなく触れられた小指をなぞり返してみた。
しかし駿河の感覚だけが抜けない。
そこに別に暖かみがあるわけでもなく、ただただ感覚が残っているだけだった。
嘘だ、それから少しの動悸も。
こういうのって何だか昔を思い出す。
そう言えばあの人もよく俺の小指を触ってたなぁ。それだけじゃない、舌の先でゆっくりと舐められたりしてた。その度にふわっと髪の毛が手と腕に当たるのが心地よくて大好きだった。
今でもたまにふとした時にあの人のことは思い出す。
あの時はまだ中学生で子供だったから、どんなに頑張っても特別これといった特徴のないせいで誰からも評価されなくて寂しい、なんて気持ちを抱いていた。
でも、その感情を表に出すことは出来なかった。
そんな俺の本音をただ一人、気づいてくれたのがあの人だった。
話を聞いてもらって仲が良くなる程に、あの時の精神状態では相手のことを好きになってしまうのは必然的だったわけで俺はあっという間にあの人のことを好きになった。
そして奇跡的に恋人という関係になることが出来た。
でも
その続きの『思い出』を振り返ろうとした時、突然ぶるりと全身が震え一気に血の気が引き、ふと我に返った。
「…………ははっ」
そしたら何だか過去の事なんか振り返っていた自分が無性にアホらしくなり笑いがこみ上げてくるのを抑えられなくなってしまった。
「突然なんだよ」
駿河は当然の如く突然笑い始めた俺を不審な目で見つめながら聞いてきた。
「何でもないですよ」
眉間にシワを寄せながら頭を軽く傾げたもののその後は何も聞いてこないで駿河は煙草を吸いはじめた。
コイツのこういう所は好きだ。アッサリとしていて非常に男らしくてかっこいい。
あの人とはまるで正反対だ。あの人は穏やかだけれども気になることは何日かけてでも聞いてくる。
…………やめよう。あの人のことで一度このモードに入ってしまうとズルズルと引きずってしまうのが悪い癖だ。
29にもなって大人気ない。
そうやってもう今までにも何度も反省しているのに同じことを繰り返してしまうのは、やっぱりまだあの人のことを諦めきれていないからなのかな?
今、どうしているんだろう
先生は
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
56 / 130