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25-1side麗
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どれくらい時間が経ったのか、麗はまだ男の腕の中で泣き続けていた。
「ひっく...うぅぇっ、ふぅっ...んんっ、」
「れい...泣かないで...」
男は困った様な顔でなんとか麗を泣き止ませようとしているようだが、麗が泣き止む気配はない。
「や、ぁあっ...しぃ、かえるぅ...ぅ、ひっく...」
「しー...東雲獅琉...」
男が獅琉の名前を呟くと麗がぴくりと反応した。
「...っ!」
しーのこと知ってるの?
「東雲獅琉...れい...だめ...」
「...だめ...?」
「うん...」
『何がだめなの?』と麗は聞きたかったが、男があまりに哀しそうな顔をしていたため聞くことができなかった。
この人は...悪い人?善い人?
「...涙、止まった?」
何時の間にか涙が止まっていた麗の顔を覗き込んで男が訊ねる。
「...ん」
麗が小さく頷くと男はホッとしたように笑い、麗の涙を大きな手で拭った。
「もう、泣かないで...」
「......」
じっと顔を見ていると不思議そうに首を傾げる男。
「おにぃさん...だ、れ...?」
麗が自分から話しかけてきたのはここに来てから初めてのことで、男は驚いたようにはにかんで答えた。
「隼(ハヤテ)...」
「はやて...さん...」
「ううん...はやてって呼んで?れい」
そう言って麗の白い頬に自らの頬をすり寄せて来る様子は人懐っこい大型犬の様だ。
「はやて...」
呟くように麗が名前を呼ぶと一層嬉しそうに麗を抱きしめる隼。
その姿は自分を大好きな獅琉の元から連れ去ったとは思えない程優しく、麗は混乱していた。
どうして僕をここに連れてきたの?どうして僕に優しくするの...?
暫く麗の感触と匂いを楽しんでいた隼はやがて顔を離し、麗に言った。
「...服...濡れてる...着替える...」
そう言われて自分の(実際には獅琉の)服を見下ろすと、確かに涙で濡れていた。
「待ってて...」
獅琉のベッドより少し小さめのベッドに麗を下ろし、返事をする間もなく隼はどこかへ行った。
がちゃん...とドアが開いて閉じる音が聞こえたから、部屋の外へ出て行ったようだ。
一人残された麗は、ベッドの上でぐるりと周りを見渡して呟いた。
「ぼく...かえらなきゃ...」
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