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32-4side麗
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獅琉が出かけて行った部屋に残された麗は一人でソファの後ろで体育座りをして泣くのを我慢していた。
しーと...泣かないって、約束したもん...っ
きゅっと唇を結んで目に力を入れる。
泣かない、泣かないもん...っ
じわじわと滲む視界の中で思い出してしまうのは誘拐されたあの日のこと。
「...っ、ぁ...」
一人で留守番していて、どれだけ泣いても暴れても離してもらえなかったあの日。
あの日から獅琉は何度も麗に「もう怖くない、大丈夫だから」と言い続けていた。
窓も無くなり、家の周りの監視カメラも増やされ頭では大丈夫だと分かっていても、心がどうしてもあの恐怖を覚えてしまっているのだ。
「は、っ...ぁ...ハアッ...」
連れていかれた記憶が頭の中でぐるぐるぐるぐる
「...はっ、や...こないで...っ!」
振り返った大きな影
「やだ...ハアッ...やだやだ...っ」
伸ばされる手
「や...っ、いかな...ぃ...っ」
いつの間にか頬に流れ落ちていた涙にも気付かず、見えない影に向かって怯え続ける麗。
ガタガタと震える体をきつく抱き締めて蹲る。
「は...や、く...っ...しぃっ...」
早くしーに会いたい。
早く僕の名前を呼んで、僕を抱きしめて...
しばらく一人で泣いているとガチャリと部屋のドアが開く音が聞こえた。
麗はハッと顔を上げる。
まだ、しーが帰ってくる時間じゃない...今日はユズもやませさんも来ないって言ってた...
じゃあ...今入ってきた人は...?
「...や、や...やだ...っ」
また連れて行かれる。
知らない人が入って来ているかもしれない恐怖に麗はパニックに陥る。
逃げなくちゃ...また、怖くて、悲しくて、寂しくて、辛くて...
しかし腰が抜けてしまった麗は座った状態のまま、ずるずると後退ることしかできない。
足音はどんどん近くなる。
「ぁ、こ、こないで...っ、ひっく...や...っ」
麗はギュッと目を瞑り、自分の頭を抱えた。
もう、あんなに寂しいのは...嫌なの...っ
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