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光の先に見たもの 8
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櫻川は一瞬の迷いを見せたが、恐る恐る足を踏み出した。
少しずつ長山に近付いて行く。
余程本に集中しているのか櫻川に気づく様子はない。
ベンチまであと数㎝のところで櫻川は足を止めた。
「あっ、あのっ!」
その声に長山は読んでいた本から顔を上げ櫻川を見た。
眼鏡越しであっても吸い込まれそうなほど綺麗な瞳。
真っ正面にある瞳はたしかに自分を映している。
櫻川にはそれがなによりも嬉しかった。
だが言葉が続かなかった。
あんなにも言いたいことが沢山あったはずなのに。
何一つ出てこない。
この瞳に見つめられると身体が、口が、頭が・・・動かない。
静寂が辺りを支配する。
それを破ったのは長山だった。
「ここに人が来るなんて珍しいね、君は?」
「あ、あのっ僕っそのっ」
「・・・・・あれ?君もしかしてこの間危ないめにあってた子?」
「・・・・・はいっ!貴方に助けていただきました!」
「髪切ったんだね。うんやっぱりそのほうが良いよ」
二人の間を一陣の風が吹き抜けた。
木々が音を立て風に揺れる。
「すごく綺麗だ」
髪を靡かせながら笑う長山を見て、櫻川は曖昧な感情の正体を知った。
ああ
僕はこの綺麗な人に
恋をしたんだ
それが櫻川碧と長山太一の初めての会話だった。
と同時に櫻川が長山への恋心を自覚した瞬間でもあった。
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