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静かな空間に皿とスプーンが擦れる音だけがする。
ダイニングキッチンには二人、その手前共有スペースの地べたに四人、ソファに一人が座って食事をしていた。
テレビはあるもののついておらず、無音の空間が続いている。
それを撃ち破るかのようにダイニングキッチンの一方の椅子に座っていた櫻川が、前に座っている長山に話しかけた。
「太一さま、なにか楽しいことでもありましたか?」
櫻川が尋ねたのも無理はない、先ほどから長山の唇は綺麗なカーブを描きながらスプーンを口に運んでいるのだから。
眼鏡は外されテーブルの上に置かれている。
そのため普段はなかなか見ることができない瞳も楽しげに細められているのが見てとれる。
ちなみにこの眼鏡、伊達である。
共有スペースにいる五人も疑問に思っていたらしく、いつもはなにかといがみ合っている脇坂でさえ、櫻川の言葉に首を縦に振り、同調の意を示した。
「楽しそうなモノを見つけたよ」
そう言って笑う長山の顔は、櫻川が天使と喩えるようにとても綺麗なものだった。
常人が見れば、一瞬で舞い上がってしまうものだが、ここにいる人間は誰もが知っているのだ。
この顔をする長山太一は碌なことを考えていない。
そんな長山に恐々としながらも櫻川は声をかける。
「・・・・・・新しいオモチャ・・・・ですか」
櫻川の言葉にますます瞳を細め口角をつり上げる。
「生徒会室に拉致られた後、面白い奴等に会ったんだ。チビなのに威勢よく吠える可愛い仔犬たちに。あの五月蝿い宇宙人達の喜劇より、よっぽど喜劇らしいものを見たよ」
「・・・・・・仔犬?・・・・・・っまさか親衛隊!」
櫻川は勢いよく立ち上がった、その拍子に皿とスプーンが派手な音を立て床へと落ちる。
「碧、行儀が悪いよ。その床誰が掃除すると思ってるの?智哉だよ?」
「俺かよ」
柏木が力なくつっこんだ。
「あっ、すいませんっ!ってそんなことよりも誰に会われたのですか!」
「碧以外の生徒会の隊長」
「・・・・・・っ、失礼します!」
櫻川は慌てふためき、長山に軽く頭を下げると、共有スペースの五人にいっさい目をくれず、その前を通りすぎ玄関へと駆けていく。
「碧、またご飯一緒に食べようね」
「・・・・・はい、喜んで」
そして、大切な人を守るため動き出すのである。
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