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静かな二人だけの時間
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「ほらよ」
テーブルの上にことりと置かれた熱々のコーヒーが注がれたマグカップ。
「ありがとう、珍しいね智哉がコーヒー淹れてくれるなんて」
「うるせ、気分だ気分」
柏木は自分の分のマグカップを持ち、ソファに座る長山の隣にどかりと腰を下ろした。
ちなみにダイニングキッチンの床は綺麗になっているが、それを掃除したのは柏木ではなく脇坂だ。
ぶつくさ文句を言いながらも完璧に跡形もなく綺麗にしてみせた。
その最中も矢崎と澤城から、主夫だなんだのと野次が飛ばされていたが。
「お前どうするつもりだ」
「何が?」
「全部だ全部、生徒会とか転校生とか親衛隊とか、その他諸々」
テレビには今話題のお笑い芸人がネタを披露している姿が映しだされている。
「智哉はこの芸人面白いと思う?」
「は?」
自分の質問とは全く違うことが返ってきたことに柏木は眉をひそめ、テレビに視線をやってますます顔をしかめた。
「知らん、そもそもこいつらに興味がないから面白いとか分かんねぇよ」
その答えを聞いて長山は軽く声を出して笑った。
「ははっ、智哉らしい答えだね。でも正解だよ。人がそれを見てカッコイイだの、可愛いだの思うのはそれに興味があるから。道端に落ちている小石を見て可愛いなんて思う人間はまずいないだろ。それと一緒さ」
長山はテレビから視線を外さないまま、柏木の淹れたコーヒーを一口口に含んだ。
「今の学校内だって同じさ。親衛隊は生徒会に興味があるから生徒会に近づく転校生が気にくわない。生徒会と転校生は興味を持たれることが当然だと思ってる」
「なにが言いたいんだよ」
「誰にも興味を持たれなくなった後のあいつらの未来はきっと無様で滑稽なんだろう、と思ってな」
「だからそうなるように仕向けてんじゃないのか?」
「よく分かってるね、流石智哉だ」
「何年一緒にいると思ってんだよ」
長山と柏木は所謂幼馴染みという間柄であり、だからこそこいつのことは誰よりも分かると柏木自身自負しているわけで。
「お前の好きなようにやるのはいいが無茶だけはするなよ。お前になにかあれば黙っていない連中が多いからな。俺を含めて」
その気持ちは長山自身重々理解しているつもりだが、長山の基準は自分が楽しめるか楽しめないかである。
かといってその気持ちを邪険に扱うつもりはない。
「頭の片隅には置いておく」
「アホ、目立つとこにちゃんと置いとけ」
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