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ネコ
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いつも通り自室のドアを開けると、いつもの面子とこの部屋には不釣り合いな人物の姿を捉えた。
それを軽く無視し、いつも通り首元を緩めながらキッチンスペースへと歩いていく。
喉を潤そうと冷蔵庫を開けたところで、体に軽い衝撃が走った。
「ちょっとー、僕のこと無視しないでー」
腕を絡め、体に抱きついてくる人物を見て小さく息を吐き出す。
「・・・・柚季」
その人物――会計親衛隊隊長の阿南柚季は長山に抱きつきながらニッコリ笑った。
「やーと、僕のこと見てくれた。寂しかったんだよ?太ちゃん」
「ふざけた名前で呼ぶな」
「え~・・・だって太ちゃんは太ちゃんでしょ?」
阿南は呼び方について長山に咎められたにも関わらず、それを改めようとはせず、そればかりか変な持論を展開させる。
「この間だって寂しかったんだよ?太ちゃんてば一回も僕と目を合わせてくれないんだもん」
「この間のあれは、親衛隊隊長といびられる平凡。あの場にはぴったりな対応だっただろう?」
「ぅー・・・そうだけどー・・・でもー・・・」
その小さな体のどこにそんな力があるのか、後ろから抱きつかれていた体はひっくり返され、阿南と向き合うような格好にさせられる。
「僕は寂しかったの!」
そう言うと同時に、眼鏡を取り上げられ、前髪を掻き上げられる。
頭一つ分小さな阿南から見上げるように送られる熱の籠められた視線、輪郭に沿って這わされる手はひどく妖艶で。
「・・・・はぁ~、やっぱり綺麗」
その声は甘さを含んでいた。
「食べちゃいたい」
阿南は、あーん、とまるで大好物でも食べるかのように長山の瞳に齧り付こうと口を大きく開けた。
それを顔の前に手を出し、ガードする。
「何回も言っているが、俺にそんな趣味はない」
「太ちゃんのケチンボ」
そんな長山の行動は予想の範囲内だったのか、邪魔された阿南は悪びれる様子もなく舌をペロリとだし、おちゃらけてみせた。
「ところで何しに来た、普段こんなとこ来ないくせに」
「あ、そうだ。すっかり忘れてた」
阿南は長山から離れると、くるりと回りながらテーブルに飛び乗り腰かけた。誰も行儀が悪い、とは言わない。
「生徒会役員から太ちゃんへの制裁命令が出たんだ」
まるで、今日はカレーが食べたいな、と夕食の希望を言うかのごとく、自然と発せられた言葉にその場にいた誰もが一瞬反応が遅れた。
「・・・・・はぁ!?なんだそれ!」
「生徒会はそこまで落ちぶれたのかよ」
「あ、ちなみに今回の件にあっちゃんは関わってないから」
阿南が"あっちゃん"と某芸能人のように呼ぶ人物は、会長親衛隊隊長にして全ての親衛隊を纏める総隊長―櫻川碧である。
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