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王子と幼馴染み
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「今日は上から大量の墨汁が降ってきたらしいよ」
「・・・・・・・・・」
「昨日は大量の生ゴミ」
「・・・・・・・・・」
「その前が――」
「何が言いたい」
「別になにも、ただ・・・見かけによらず心配性で世話焼きの幼馴染み君はいつ動くのかなと思ってね」
「それは嫌味か?」
「うーん、どっちかって言うと・・・妬みかな」
「・・・・・・・・・」
「結局あの人が最終的に頼るのは君だからね。それが少し悔しいんだよ」
この部屋のもう一人の住人が不在のなかで、見た目立ち振舞いとも完全にどこかの国の王子のような倉橋と炎のように真っ赤な髪にジャラジャラ鳴る両耳のピアス、硬派な顔つきではあるがおもわず目を逸らしたくなるような雰囲気を纏う柏木。
そんな二人が並んで座っている光景は正にミスマッチである。
「別に俺は何もしない。見てれば分かるだろ。あいつは楽しんでる。その証拠に通らなくていいはずの本校舎の廊下を態々毎日歩いているだろ」
「そして毎日のように何かしら頭の上に降ってきてるよね。まぁ、上手く躱してるみたいだけど」
「今日は何をしてくるか、あいつはそれが楽しみで仕方ないんだよ」
「親衛隊はイライラしているだろうね。制裁のターゲットは見た目平凡のあの人だ。本当ならすぐにここから追い出せるはずだった。それが実際はどうだろう、追い出すどころか制裁すら成功しない。親衛隊の子達の気持ちを思うと切なくなるね」
倉橋は優雅な手つきでマグカップを持ち、それを口元まで運ぶ。
「お前はどちら側だ」
しかし、隣からかけられた言葉に動きを止めた為、苦味のなかにほんのり甘味を含む液体が口の中に流れ込んでくることはなかった。
「それこそ愚問だね。俺はこれから先もあの人以外に付く気はないよ」
倉橋はカップを傾け、今度こそ入ってきた黒い液体を口の中に含み、味わうようにゆっくりと飲み込んだ。
「お前も大概物好きだよな」
「お互いにね」
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