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風紀委員長の娯楽
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バタバタ駆けていく遠山の後ろ姿を物陰に隠れ見ている者が一人。
姿が見えなくなるまでただ静かに見つめたあと今度は生徒会室のドアへと軽く耳を押し当てた。
微かに聞こえる声に眉間に皺を寄せ、遠山が走っていった方とは反対側へと歩きだす。
カツカツカツ
無機質なコンクリートの床に靴が擦れ、音が廊下に反響する。
暫くすると一つの部屋が見えた。
『風紀委員室』
中では何人かが書類を手に忙しそうに走り回っていた。そのうちの一人が無言で中に入ってきたその人物に気づき声を上げる。
「あーーー!!!委員長何処行ってたんですか!!」
その声で他も気づき、とたんに非難の声が飛んできた。
委員長と呼ばれたこの部屋の長である鳴海は、そんな声を軽くいなして部屋の奥にある机にどかりと座った。そこにきて鳴海は漸く息を吐いた。
「この忙しい時に何処で油売ってたんですか?」
「生徒会室に書類を取りに行くと言っておいただろ」
「あ、そういえば。でもそのわりには何も持ってないようですけど」
「中に無能な猿達がいたからな。中に入らず引き返してきた」
「あー・・・なるほど」
風紀委員室の床や机の上にはたくさんの書類が山積みにされている。
内容を見れば会計予算案だったり、行事の企画書だったりするのだが、これらは本来生徒会がやるべきものだ。
「・・・・あ、じゃあこれに判子お願いします」
「それはどっちのだ」
「風紀です」
それに加え、風紀としての書類まで捌いているわけだから、今の風紀委員会は猫の手も借りたいほど忙しいのだ。
鳴海は渡された紙に目を通す。
「なんだこれは」
「物品請求書ですが」
「そういうことを聞いているんじゃない。これの報告書は」
「こちらに」
「普通出す順番逆だろ」
鳴海は出された紙を読み進める。
そして溜め息を一つ。
「またか」
「またです」
「こいつらは今何処にいる」
「軽く事情聴取して帰しました。初犯だったので三日間の停学にしましたがよろしかったですか?」
「上等だ」
遠山が転校してきたことによって幾つかの弊害がおこった。
その一つが生徒会の職務放棄であり、そのため学校内の様々なことが滞ることとなった。またその時期から不良同士の喧嘩や一般生徒への暴力、恐喝が急激に増えた。
先程、鳴海が見ていた報告書も不良同士の殴りあいの喧嘩の末、窓ガラスが割れたというものだった。
鳴海にはその理由が分かっている。
それでも今は何もしない。
ただじっと待つ。
アレが動くまで。
面白くなるのはそれからだ
鳴海はひとまず溜まっている仕事を片付けるため、目の前の書類に手を伸ばした。
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