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馬鹿な犬ほど・・・・・・
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犬を自分のテリトリーに帰らせ、犬がいたことも知らず罵声を浴びせ続けたギャラリーを無視して長山は一人隔離校舎に程近い木の根元に腰を下ろしていた。
サラサラと柔らかい風が長山の髪の隙間を通り抜けていく。
このままここで寝てしまおうか。
そんなことをすれば口煩い母親みたいな幼馴染みに何を言われるか分からないのだけれど。
だけど、そんなことさえどうでも良くなって、心地良い風に身も心も委ねてしまおうかと、完全に木に体を預け、目を閉じ夢の世界に旅立とうとしていた長山の耳が草を踏み潰す、この場に不釣り合いな音を拾った。
ザクザクと耳障りな音はどんどん長山へと近づいてくる。
そして長山の前でその音はピタリと止まった。
不躾な音に眉を寄せ、目蓋をゆるりと開ける。
一番最初に目に入ったのは内履きで、その色から自分より年上だと知ることができる。
そこから徐々に視線を上げていく。
着崩されたなかにも、育ちのよさが窺える上品な立ち姿、きっと自分とは育ち方も育った環境も違うのだろう、とその顔を確認して思わず目を見開いた。
「・・・・・てめぇは」
長山の前にドンと立っていたのは桐生だった。
桐生は長山の姿を認めると驚き目を瞠り、しかし次の瞬間には蔑むような目をしたかと思うと、なんの躊躇もなくその足を長山にむかって振りかざした。
ドン!
「・・・・・・っ!」
間一髪で躱した足は、ちょうどさっきまで長山の顔があった場所にめり込んでいた。
パラパラと木屑が落ちる。
息つく暇もなく第二撃がくる。
それも上手く躱し距離をとる。
咄嗟のことだというのに長山は少しも息を乱すことなく桐生に向き直った。
「・・・・・・・生徒会長様が一般生徒に暴力なんてしていいんですか?」
「うるせぇ、そんなことより葉瑠夏はどこだ」
「遠山、ですか?」
「お前を呼んでくると生徒会室を出たきり戻ってこない」
「・・・・・そうですか、でも俺のとこにも来てないです」
「チッ」
舌打ちを一つして桐生は背を向ける、そのまま向こうへ行くのかと思いきや振り返り長山の前までズカズカ歩いてくると、強い力で襟元に掴みかかった。
ギリギリと力が込められ体格差のある体は簡単に持ち上がる。
足が完全に地上から離れ宙に浮く。
首が締まり息がしづらい。
「・・・ぐ、あ"ァ・・・」
長山はたまらず声を出した。
息苦しさに目の前が霞む。
落ちる
直後、長山の体は地面に叩きつけられた。
「・・・・ゲホッ・・・がはっ・・・・!」
急に入ってきた酸素に噎せかえる。
「これ以上葉瑠夏に近づくな。もしまた葉瑠夏に近づいたら、分かってんだろうな?こんなんじゃすまねぇぞ」
言いたいことだけ言うと桐生は今度こそ長山の視界から消えた。
残された長山は打ち付けられズキズキ痛む体を擦りゆっくり立ち上がる。
葉瑠夏葉瑠夏、五月蝿い
まるで物覚えが悪い犬だな
「うちの犬どもの方が何倍も賢いけどな」
堪え性がない犬どもの手綱が切れるまであと僅か
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