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潰された楽しみ
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前にもちらりと述べたように、隔離校舎の教室には授業なんてものはない。
一応、クラス担任も副担任も教科担当もいるし、時間割も組まれているのだが、それは形だけのもので、実際には教科担当も副担任もクラス担任でさえもこの校舎に足を踏み入れることはない。
それは授業にならないというのもあるが、一番の理由は、教室に一歩でも入ると、まるで自分が檻の中に捕らえられ周りを肉食動物に囲まれた草食動物のような気分に陥るからだ。
それはこの教室も同じであり、とうに授業は始まっているにも関わらず教壇に立つ教師の姿は見えないし、生徒は生徒で、携帯ゲーム機で通信プレイをしたり、ウォークマンで音楽を聴いたり、スマートフォンを弄ったり、駄弁ったりと各々が好きなように過ごしいる。
しかし、そんな中でも視線はチラチラと机に突っ伏し惰眠を貪っている長山の動向を窺うように向けられている。
形式だけのチャイムが鳴る。
その音に肩をピクリと反応させ長山はのそりと顔を上げた。
乱れた髪を手櫛で整え眼鏡を掛け直し、軽く背筋を伸ばす。
ちらっと見上げた時計は、全ての授業が終了し放課後になったことを示していた。
眼鏡の奥に見える瞳は愉快そうに細められ、口は愉しげに歪められている。
それはぞくりとするような綺麗で凶悪な笑顔だった。
「・・・・・・・帰るぞ」
最近のお楽しみのために教室から出ようとした長山の足を止めたのは柏木だった。
「智哉」
鞄を持ち、長山の行く手を阻むかのように立ち塞がる。
「どうした?今日も先に帰っていいよ?どうせヤルことがあるし」
「いいから帰るぞ」
有無を言わせないという強い眼差しで見られ、長山は深く息を吐いた。
この幼馴染みはいったい何を考えているのか全く理解できない。
・・・・・ウソ、理解できるけど理解したくないだけ。
ほんっと、めんどくせぇー・・・・・
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