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現実と理想の狭間
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球技大会の喧騒から外れ、今は使われてない古い用具室。
1人の生徒とそれを取り囲むように立っている10人余りの生徒達。
「長山太一、なんで呼ばれたか解っているね!」
いつかも同じようなことを言われたが、今回それを言ったのは下関ではない。
名前も知らない誰か。
この物言いからして親衛隊であることには間違いないだろうが。
「何度も忠告したよね。それでも変わらずお前は・・・・っ!」
リーダー格らしき生徒が前に出てきて強く言い放つ。それを切っ掛けに方々から声が飛ぶ。
「もうあの方達に近づかないで!」
「あの方達の視界に入らないで!」
「あの方達の邪魔をしないで!」
「あの方達の・・・・・・・・っ!」
必死な顔をしてこいつらは誰を思ってるんだろう?
"あの方達"と言いながらも固有名詞はいっさい出てこない。
こいつらの瞳にはいったい何が映っている?
幻覚
幻想
幻影
いつまでソレを追いかける?
その幻を・・・・・・
「あんたさえいなければ!あんたさえっ!」
「ねぇ、あんた達さ、何をそんなに恐れてんの?」
「・・・・・・・・え?」
「俺にはあんた達が無理して強がってるようにしか見えない。・・・・なぁ、何がそんなに怖い?」
現実を突きつけられることがそんなに怖いか?
「いいかげん現実を受け入れろ。お前達の知っているあいつらはもういない」
「・・・・・・っ!」
「おっ、お前に何が解る!何も知らないくせに知った風な口を聞くなっ!」
駄々を捏ねる子供のように頭を振り否定の意を示す。
認めたくない。認めない、と。
だがそうやっていつまで現実から目をそらす気だ?
周りを見てみろ
何人かは現実を受け入れ始めてるぞ
茫然と床に手をつき項垂れる者。
唖然とただ宙を見る者。
声を出し幼子のように泣き崩れる者。
「違う!!あの方達は違うっ!プライドは高いけど自分の仕事には責任を持ってて!!」
「我儘で、自分勝手で、恋に盲目で?」
「違うっ!!!!」
耳を塞ぎ、何も聞きたくないと叫び声をあげる。
泣き喚き、咽び泣く声が広くもない空間に響いた。
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