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カウントダウンの始まり
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「なんだそりゃ」
思いがけない長山の言葉に脱力する。
その目元は僅かに赤らみ、珍しく照れているのだということが見てとれる。
柏木だけではなく他も似たような反応をしている。
それを見て長山はますます笑みを深めた。
確信犯なのが嫌でも分かる。
周りを困惑させるだけさせておいて当の本人はあっさりと話題を変えるのだ。
「ところで最近の情勢はどうなってる?」
「・・・ぇ、ぁ、うん」
突然の長山の言葉に矢崎は吃りながらも小脇に抱えていたノートパソコンを起動させ乱雑に置かれた鉄材の上に右足を上にして足を組み座った。
目元は未だに赤いままで。
「そう言うと思って調べといたよ」
矢崎は組んだ足の上にパソコンを置き、手早く指を動かす。
「俺達が高校に行ってから活動が活発になったのは4つ。だけどその全てがこの1年以内で休止または解散してる」
「理由は?」
「全てのチームが毒蝶の襲撃を受けてる」
長山の瞳が細められニヤリと唇が弧を描く。
「・・・・・・へぇ?」
それを真正面から見た矢崎はぞくりとした寒気を感じながらも言葉を続けた。
「えっと・・・時期はバラバラだけど時間帯は同じ。全てのチームが2時から3時の間にやられてる」
「俗に言う一番夜が深くなる時間か?」
「だろうね、それを狙ってやってるかどうかはまた別だけど。・・・・・そんなに頭良いとも思えないしね」
「でもこれで確信が持てたかな。アレが本当に毒蝶だって」
「ああ、毒蝶が消えた時期とも一致する」
「あれ?瑞季と智哉は俺の調べあげた情報信じてなかったんだぁ?」
「てめぇの情報鵜呑みにする方が問題だろぉが」
「駄犬は黙って飼い主に尻尾振ってろ」
「あ"ァ!?」
再び発生した矢崎と脇坂の睨み合い、余計な一言を言えば(言わなくても)面倒くさい空気になるのは分かりきったことなのに何時になっても学習しない。
周りは見慣れた光景だと気にも止めないけれど。
「太一どうする」
「ん~?」
「動くか?」
ちらりと捉えた視界の端に喧騒に混じる澤城の姿が見えた。自ら面白おかしく掻き回しに行くのだろう。
そんなことどうでもよい、と謂うように柏木は今まで黙って矢崎の話を聞いていた長山に静かに問いかける。
「別に俺が動かなくてもアレはいつかボロを出す。だからその前に潰すのは」
「生徒会、かな」
倉橋の言葉にニッコリと笑みを浮かべる。
「そういえばあいつらどっか行くとか言ってなかったか?」
「・・・ああ、そんなことも言ってたね。たしか桐生会長の別荘に行くとか」
「はっ、いい御身分だな」
「僻みかな?」
「ちげぇよ」
「今のうちに思う存分楽しんでおけばいいよ」
長山は少し離れた所で未だにいがみ合っている3人の名前を其々呼ぶと近くへ来るように促した。
「さて、お前達にもずいぶん我慢してもらったね。いつもは最前線にいるお前達が傍観者の位置にいるのはストレスになったと思う。でも我慢して我慢して我慢した後の方がより楽しめるんだぜ?それこそ最高のエクスタシーを味わえる」
味わってみたいだろ?
その言葉とともに極上の笑みを浮かべる長山を見つめるのはぎらついた10個の瞳。
夏休みはまだ始まったばかり。
ピラミッドの頂点が入れ替わるまで、
あと1ヶ月と10日あまり。
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