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天使降臨
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パチン!
空気を震わす音と同時に飛び出したのは黒い塊。
それは凄まじいスピードで少年達に突っ込んでいく。
「うわっ!!」
「・・・・・・がっ!!」
そこではじめて少年達は認識した。
それが塊ではなく自分達と同い年くらいの少年であると。
すかさず次の塊、人影が突っ込んでくる。
少年達は突然のことになすすべなく地面に崩れ落ちる。
慌てて立ち上がろうとした少年もそこを狙い打ちされ仲間と同じ道を辿る。
「やっぱり腐っても駄犬だね。ご主人様の命令には一番に飛び出していくんだから。後で俺がよしよししてあげるね」
「いんねぇよっ!!」
「遠慮しなくてもいいのに~。ほらワンワン次はあいつをぶっ飛ばしておいで~」
「こっの!黙れ変人コンビがっ!!」
そんなことを言い合いながらもしっかり周りの少年達の鳩尾に蹴りを入れていく。
別の少年達は仲間がヤられていく姿に顔を青ざめた。
その前に立ちはだかる2つの影。
「ねぇ、俺達も暴れていいんだよね?」
「あ?知るか。てめぇの好きにすればいいんじゃねぇか?」
「でもお許しは出たみたいだよ?」
「だったらいいんだろ?・・・・・暴れてもよぉ」
「なんだか久しぶりだね」
1人は綺麗な笑みを浮かべ、1人は両手を体の前で組みポキポキ指を鳴らす。
「準備運動いるかい?」
「はっ、それこそ今更だろ」
ドカッ!!バンッ!!ダンッ!!
「・・・・・ぁがっ!」
「・・・ぐはぁっ!!!」
おもわず耳を塞ぎたくなるような音や醜い叫び声が阿鼻叫喚となり木霊する中、彼――長山は1人我関せずといった様子で雑居ビルの間から月を見上げていた。
「いい気になってんじゃねぇぞこらぁ!!」
綺麗な満月に心を奪われていると不躾な声とともに背後から鉄パイプが振り下ろされる。
しかし長山は突然のことにも動じることはなくするりとそれを躱すと横腹に回し蹴りを。
「・・・ギッ・・・っ!」
体勢を崩したら間髪入れず背中へ踵落としを。
「・・・・・ぐ・・・・が・・・ァ"」
ズシャャャャャャ!!!!
砂埃を上げ地面に崩れ落ちる体。
白目を向いて口からは沫を吹きピクリとも動かない。
すとんと地面に着地する小柄な体。
フワリとフードが落ちその装いが露になる。
月明かりに照らされたその姿はまるで天使のよう。
天使が静かに口を開く。
「よく覚えとくといいよ。こういったことに体の大小は関係ない。喧嘩は体でするんじゃない。頭でするんだ」
ぐるりと周りを見渡す。
点々とある人の塊。
それらは屍のようにピクリとも動かない。
「・・・・ここじゃなかったみたいだね。お前達少しは愉しんだか?ここにはもう用はない、行くぞ」
そう言うと踵を返しメインストリートへと続く道を戻っていく。
「・・・・・おい」
その途中視界が黒いもので遮られる。
「頭隠しとけ。ここではお前は目立ちすぎる」
長山はそう言った少年――柏木を下から見上げる。
目の前にはフードの裾から見える赤い髪。その後ろには金髪、なんとも形容し難い奇抜な髪色と。
お前がそれを言うのかと言いたくなるが、そんなことを言えばまた面倒くさい言葉が返ってくるのは目に見えている。
納得がいかないと下から睨み付けてくる瞳に対して柏木は心の中で深く溜め息を吐く。
長山は自分の容姿に対して無自覚すぎるとこがある。ある程度整っていることは自覚しているがその程度だと思っている。
昼間のショッピングモールの時もそうだ。通りすぎる人が皆長山を見ては頬を朱に染めたのだ。
女も男も。
善からぬことを考え笑う時はそれがさらに顕著になる。その妖しい雰囲気に誰もが魅せられる。
だからこその忠告だったのだが。
頭が痛くなる。
柏木は今度は周りに聞こえるように大きな大きな溜め息を吐いた。
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