アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
道程
-
刻は少し遡る。
長山と柏木は校門の前に立っていた。
ここまでは柏木の母親―アキに送ってもらった。
ただ終業日と違うのはその車に長山の母親―ミナが同乗していたことだ。
道中の車内はミナの独壇場だった。
と、言うのも普段は離れて暮らす息子が折角帰ってきたのに一緒に出掛けたのは初日のショッピングモールだけで、それ以外は外に誘っても適当な理由をつけて断るものだから寂しかったらしい。
本当はもっといろんな所へお出かけしたかったのに、延々と続くそれに流石のアキでさえも苦笑いだった。
冬休みは絶対帰ってきて買い物に付き合うこと、別れ際そんな約束を取りつけ、車は来た道を戻っていった。
どんどん小さくなる車を見送っていると隣から吹き出すような笑い声が聞こえた。
「・・・・・・なに」
「いや、お前もあの人には弱いよな」
隠す気がないのか、言いながらも時々肩を跳ねさせ笑う柏木をジト目で睨むが否定する気はない。
あながち間違いでもないから。
「智哉、先寮戻ってていいよ」
「あ?」
「ちょっと行くとこあるから」
「分かった。その代わり余計なことせず戻ってこいよ」
「分かってる、あとこれ」
そう言いながら長山は自分の荷物を差し出す。
「は?」
「部屋に持っていって」
柏木は荷物と長山の顔を交互に見て、溜め息を吐き出してから荷物を受け取った。
それを見て長山がくすりと笑う。
「智哉も充分俺に弱いよね」
「うるせ」
軽口を叩きながら柏木は寮へと、長山は校舎へとそれぞれの道を行く。
長山は確かな確信をもって風紀室へと向かった。
そこにいると思ったから。
結果その予感は見事に的中し、自分の姿を見て驚き固まった鳴海に心の中でほくそ笑んだ。
それからは迷っている鳴海の背中を押すように声をかけた。
あとは鳴海次第。
だが長山には確信があった。
アレはけして俺の期待を裏切らない
部屋に戻れば柏木は勿論のこと脇坂達までもが集合していた。
帰ってきた長山の顔を見て柏木は顔を歪め、矢崎と澤城は楽しげに、倉橋は困った風に笑い、脇坂は拳をパンッと掌に打ち付けた。
そして今日は運命の始業式。
長山達は教室へと続く廊下を歩いていた。
予鈴はとっくに鳴り一般生徒はすでに始業式が行われる体育館へと集合しているだろう。
隔離校舎の生徒には本来、公式的な式に出る義務はない。出ても一般生徒に恐怖心を与えるだけなので学校側から免除されているのだ。
だが今日だけは違う。
ガラリ
静かな音をたて教室のドアが開けられる。
中にいた者達の視線が一点に集中する。
「行くよ」
緩やかに弧を描く唇、愉しげに細められた瞳。
崩壊の刻が近づいている。
さぁ、愉しむ準備はできてるか?
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
94 / 128