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偽者プリンス
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カーテンが閉めきられ暗い部屋に人目を避けるように彼らはいた。
「あー本当に助かった!あのまま一生あそこから出られないかと思ったぜ!ありがとうな静雅!」
お互いの輪郭さえも近づかないと確認できない距離にいるにも関わらずあいかわずその声だけは何処にいてもはっきりと聞き取れる。
「いえ、当然ですよ」
下手したら騒音になりかねない大声にも関わらずかけられた方は暗くてよく見えないが優しげに微笑んだのが気配で分かった。
「そうだよな!友達だもんな!俺を助けるのは当たり前だよな!」
「はい」
「それにしても帝達はなにしてんだよ!俺が大変な目にあってるんだから助けに来るのが当然だろ!」
「ふふ、あの人達のことはほっときましょう」
「そうだな!俺怒ってるし謝るまで許してやらない!俺スッゲー寂しかったんだぜ!独りだったしさ!」
「ええ」
「皆にも会いたかった・・・・・・あーーー!!そうだ!太一に会ってない!夏休み中も全然連絡とれなかったから結局1回も会ってないじゃん!せっかく色々話してやろうと思ったのに!あっ、今から会いに行けばいいんじゃん!」
さも名案を思い付いたと言わんばかりに意気揚々と今にも駆け出さんとする遠山を止める。
「待ってください。今会いに行くのは止めた方がいいかと」
「なんでだよ!なんでそんな意地悪言うんだよ!」
「葉瑠夏よく考えてください。貴方は脱走してきた身。暫くは外へ出るのは控えたほうがいいかと思います」
「なんだよそれ!静雅まで俺が悪いって言うのかよ!」
「すいません、そういうつもりで言ったんじゃないんです。鳴海に貶められた今、学校中の生徒が私達を悪と決めつけました。そんな中で出ていったら何をされるか分かりません。ですから今は我慢してください。貴方にもしものことがあったらと思うと・・・・」
「なんだそうだったのか!それだったら最初からそう言えよな!」
不機嫌な態度から一変、相手が自分のことを思っていると分かったとたんたちまち上機嫌になる。
それに薄く笑みを浮かべる。
酷く単純な子供だと。
「それよりも葉瑠夏、あなた理事長の親族とは本当ですか?」
「俺のこと疑うのかよ!」
「いえ、そうではないんです。気分を害してしまいましたね。すいません」
「謝ったから許してやるよ!俺は優しいからな!」
「ありがとうございます」
同じ会話の繰返し。
自分が正しい、自分が大事。
世界は自分を中心に回っている。
自己中心的考え。
まるで子供。
「この建物は全部おじさんのものなんだ!おじさんはスゴいんだぞ!」
自分のことのように自慢する声に柔らかな声で同意する。
「そうですね。・・・・・・・そこで1つお願いがあるのですが」
「お願い?いいぜなんでも言ってみろよ!」
「・・・・・・実は・・・」
・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・・
「なんだそんなことでいいのかよ!俺に任しとけば大丈夫だからな!」
「はい、よろしくお願いします」
頭を下げたそれは顔を上げると口角が綺麗な弧を描いていた。
それは遠山の言う"気持ち悪い笑顔"だったが、暗い中でそれが解るはずもない。
元生徒会副会長柳静雅は暗がりの中、偽りの笑顔を作り続ける。
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