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それから約2週間。
正確には13日目の今日、風紀委員会より全校集会開催の報せが担任を通して各クラスへと伝達された。
それは隔離校舎も例外ではなく、
「そ、そういうことだから、い、今すぐ体育館にむかっ向かうように!」
珍しく教室に顔を出した名ばかりの担任は声を裏返しながら言うとそそくさと消えるように出ていってしまった。
「太一」
それを冷めた目で見ていた柏木が今度は後ろの長山へと視線を向ける。
「うん、行こうか」
頬杖をつきながら窓の外を眺めていたその顔は何を考えているのか判別できなかったが、細められた瞳と弧を描く唇から実に愉しそうなことが窺えた。
体育館にはすでにたくさんの生徒が集まっていた。
ざわざわとした空気には、これから何が始まるのだろうと、突然の集会に不安と緊張が見てとれる。
それは今年入学した1年生はもちろんのこと、2・3年生も同じだった。
むしろ2・3年生の方が強く感じているかもしれない。今まで事前に告知がある全校集会はあってもこんな緊急なものははじめてだから。
そんな異様な雰囲気が漂う中、入り口付近で短い悲鳴染みた声が聞こえた。
その声に反応し何事かといっせいに向けられる視線。
その先にはあの綺麗な人が体育館の天窓から射し込む光に髪をキラキラと輝かせながら、カラフルな集団を引き連れ悠々と歩いて来る姿があった。
その集団が、その集団のために空けられていたであろう場所へと腰を下ろす。
そこで漸く生徒達はその綺麗な人が隔離校舎の人間であることを知った。
櫻川と阿南は離れた場所からその様子を瞳を細めながら見つめていた。
壇上の鳴海もまたその異質な様子を眺め、これから何が起こるのか、体を強張らせながら、しかし今は自分が成すべきことをしっかりやるべきだとその凛とした声をマイクにのせた。
「突然の集会ですまない。我が校は1人の編入生の出現によって混乱に陥った。機能しなくなった生徒会はリコール処分とし、件の編入生は退学処分とした。しかし我が校の長い歴史の中でも退学ははじめてであり、手続きに手間取ってしまった。その間に逃げられてしまったのは我々風紀のミスだ」
すまない、と頭を下げた鳴海にあちこちから、委員長の所為じゃないよー、顔上げてー、と擁護する声が飛ぶ。
「・・・・・生徒会という組織はなくなっても生徒会がしなければならない仕事がなくなるわけじゃない。今までは風紀が分担して行っていたが、そろそろ本来の形に戻そうと思う」
え、それって、感のよく働く者達からはざわざわと疑問の声が飛び交う。
「これより新たな生徒会役員を発表する。名前を呼ばれた者から順番に壇上へ上がってくるように」
歓声が上がる。
「生徒会長2ーA南条崇、副会長2ーA加々美京、会計2ーC高橋恒樹、書記2ーB榛葉奈歩」
1人、また1人壇上に上がる度に歓声が巻き起こる。前の生徒会ほどではないにしてもそこそこ顔が整っており、なにより今壇上にいる者達は定期試験では必ず上位に名を連ねるため、ある意味名が知られているからだ。
それだけではなく各々が運動部のエースであり、生活態度は真面目、教師からも頼りにされている。
外見や家柄に囚われない、それでも一般生徒からの支持が充分に仰げる生徒会がここに誕生した。
だが、ここで終わりではなかった。
「生徒会補佐」
歓声がざわめきに変わる。
今まで、歴代の生徒会を見ても補佐などという役職はない。それは彼らが優秀だったからで補佐など必要なかったからだ。
しかし今回の生徒会には補佐がいるという。それは前の生徒会との最も大きな違い。
次は誰の名前が呼ばれるんだろう、誰もがわくわくした面持ちで待つ。
「1ーA砂川匡行」
それは1年の首席だった。
これは未来を見据えた人選。
きっと砂川は来年には補佐ではない正式な役職に就くだろう。
その為の布石。
「以上が新たな生徒会になる。これからすぐこの5名には生徒会として動いてもらうことになる。しかし学校祭の準備に関しては風紀もサポートしていく。それでは承認の拍手を」
ワァァァァ、歓声とともに拍手が鳴り響く。
それは天井に反響しより大きな音となる。
そんな中でも隔離校舎の生徒達は我関せずといった風に盛大な欠伸をしたり仲間内で駄弁っていたりとたいそう自由に過ごしていた。
長山はというとその真ん中で、ただじっと舞台上の様子を眺めていた。
「それではこれで集会を」
最後まで言うことは叶わなかった。
バァァァァァン!!
馬鹿でかい扉の開閉音の後に聞こえるのは馬鹿でかい声。
「そんなの間違ってる!」
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