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どこまでも深く深く、オチル
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「友達にそんな酷いこと言ったらいけないんだぞ!」
遠山は舞台の上と下で睨み合っている鳴海と柳を友達だと言う。
どこをどう見たらそう見えるのだろう。
「謝れよ!」
そしてなおも謝れと言う。
それを鳴海は酷く冷たい瞳で見下ろす。
「何故謝る必要がある?」
「友達に酷いこと言ったら謝るのが当然だろ!そんなことも知らないのかよ!」
「俺とそいつがいつ友達になった?」
「なんでそんな酷いこと言うんだよ!」
喚き散らすように叫ぶ遠山に鳴海は眉をしかめる。
「謝れよ静雅に!そして俺にも謝れ!」
「何故お前に謝らないといけない?謝る理由などない。むしろ謝ってもらいたいのはこちらの方だ」
「なんで俺が謝らないといけないんだよ!友達に酷いこと言うなよ!」
その言葉に鳴海の眉がピクリと動く。
「いつ、俺とお前が友達になった」
不愉快極まりない、と声色に乗せる。
「そもそもお前は何も知らない者のことを友達と呼ぶのか」
「そっ、そんなのこれから知っていけばいいだろ!」
「それをお前は自己満足とも知らずに?」
「・・・・・・・さい・・・・・うるさいうるさいうるさい!!」
煩い煩いと癇癪を起こした子供のようにただただ叫ぶのみ。
「俺のおじさんは偉いんだぞ!お前なんかここからすぐに追い出せるんだからな!」
「そうです!葉瑠夏は理事長の甥なんです!あなたの家など潰すことは簡単なんですよ!」
とっくに見捨てられた叔父の名を出す遠山と、そしてそれに便乗する柳に軽蔑の眼差しを向ける。
今更、何を言っているのかと。
「葉瑠夏が理事長に頼めば僕が再び生徒会の座に就くことだって可能なんです」
そんなありえない世迷い言まで言いだす始末。
人間とはここまで堕ちるものなのか
「・・・・・・・・・・ふはっ」
誰もがその愚行に呆れて何も言えない中、この空気には場違いな笑い声が聞こえた。
余りに余りなタイミングのそれに誰もが音の発信源を凝視する。
今まで中心で馬鹿なことをほざいていた遠山と柳も思わぬことに呆気にとられ口を"あ"の形で開いたまま固まっていた。
「・・・ぷぷっ・・・はははっ」
数多の視線に晒されながらもなお笑い続ける。
それを生徒達は信じられないものを見るような目で見ていた。
先程は遠山に対して穏やかに微笑んでいた、それが今はどうだろう。
掌で口を押さえ、笑い声を押し止めようとする。
その姿はひどく幼く映った。
「あはははははっ」
もう我慢できないと大口を開け笑うそれに呆気にとられていた遠山の思考は漸く動き出した。
「なっ、なんだ!なにが可笑しいんだ!?」
「ははっ、ひひっ・・・ははははっ!!」
遠山の声が聞こえているのかいないのか、なおも笑い続けるそれに痺れを切らした遠山はずんずんと近づいていきその肩に手を掛けた。
「おい!俺を無視するなよ!」
背を向け肩を震わせていたそれは遠山のまさに馬鹿力によって勢いよく振り向かされ対面する形をとらされた。
目尻に溜まった水滴を指先で拭いながら振り向いたその姿は、漆黒の瞳を潤ませ、頬が紅潮し、儚く色気を纏い、どこか守ってあげたくなる雰囲気を醸し出していた。
それに誰もが息を飲み、真っ正面でそれに充てられた遠山はまたもや硬直してしまった。
静寂が支配するなか、それを壊したのはやはりその人だった。
「愉しい・・・・?」
艶やかな唇から漏れ出た声は予想を裏切ることなく綺麗だった。
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