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ガラクタ
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「うあっ!」
長山に殴りかかろうとして逆に弾き飛ばされた遠山は側の木に強く頭を打ちつけた。
「う"~~~~~~~っ!」
そのあまりの痛さに頭を抱え呻き声を上げ蹲る。
それを碧い瞳が冷めたように見下ろす。
「なにするんだよ!暴力はいけないんだぞ!」
そう言って再び飛びかかってきた遠山の腹を蹴りつける。
「ガッ・・・ァッ!」
蛙が潰れるような声を出し地面に体を沈ませる。
「・・・・ゲホッ・・・・・ガハッ・・・ッ!」
綺麗な金色の髪を掻き上げながら、地面に踞り血液混じりの唾液を吐き出す遠山へと近づく。
「・・・・ハッ、ハッ・・・・・ゴホッ・・・」
顔を砂や唾液、涙などで汚し、怯えた様子で見上げる遠山を唇を歪め苦々しく睨み付ける。
「本っ当、お前ウザいわ。消えろ。地獄の釜で焼かれて死ね」
異国の王子様のような風貌から飛び出すのは酷く汚い言葉。
これまで随分大人しくしていたようだし、ストレスも溜まっていただろう。
だからこれも仕方がないかな、長山は日の光を浴びキラキラ輝く金髪を後ろから眺めそっと息を吐いた。
「・・・・瑞季」
名を呼べば振り返るその様に、本当に良く出来た犬だと思う。
一見人畜無害で王子様然とした倉橋は、沸点は高いが一度キレたら長山以外手がつけられなくなる狂犬と化し、綺麗な顔からは想像もつかないような暴言、暴力を繰り出す。
「もういい。そんな馬鹿に構うな」
納得できないと、その表情に乗せながら長山の、飼い主の元まで帰ってこようとする。
しかしふいに足を止め、再度遠山の側へと寄る。
今度は何をされるのかと、恐怖に慄く遠山は地面に這いつくばりながら後ずさる。
それを嘲笑うかのように距離は徐々に縮まる。
「・・・っ!ア、アッ・・・・こっ、こんなことばっかりしてちゃダメだッ!解った、お前寂しいんだろ!だからこんなことするんだ!俺が話聞いてやるから!だから!・・・ヒッ!」
声を裏返しながらもお得意の正義論を捲し立てる。
それが倉橋の神経を余計に逆撫でるとも知らずに。
背中に木の幹が当たり体がピタリと止まる。
それに焦ったように倉橋を見やり、顔を青ざめる。
「俺はお前のこと解るから!だからっ!」
振り上げられる足。
「だからうぜぇって」
斜めから振り下ろされるその足は、遠山の頬を霞め木の幹にがしりとぶつかった。
「・・・・・あ"・・・・あ"・・・・あ"」
ズルズルズルと遠山の体はずり下がる。
ズボンの股部分の色が濃く変色している。
あまりの恐怖に失禁してしまったらしい。
それにますます顔をしかめ、もう近寄るのもごめんだというように踵を返し、今度こそ飼い主の元へと帰っていった。
倉橋が戻れば今度は飼い主が入れ替わるように未だに放心状態で視線を宙にさ迷わせている遠山の横に立つ。
色んな液体でぐちゃぐちゃな顔を上から覗きこみゆるりと微笑む。
「君といるの、少しは愉しかったよ?」
ピクリと反応し緩慢な動きで顔を動かす。
「・・・・・ああ、そういえばまだ名前教えてなかったね。俺は長山太一。久しぶりだね遠山」
朧気だった瞳が僅かに見開き、その口が蚊の鳴くような音を発する。
「・・・・・・・た、い、ち?」
「そう、君が親友として連れ回してくれた太一だよ。毎日飽きもせず同じことの繰返し、アレはアレで愉しかったけどね。・・・・でも流石に飽きちゃったから」
茫然としながらも遠山の瞳は長山の口の動きを読み解いた。
『もうお前いらない』
口先だけを動かし、そう言うと遠山に背を向け、犬達の元へといく。
「・・・・また新しいおもちゃ探さないとな」
青く澄んだ空を見上げそう呟くと遠山の方など見向きもせず犬達を引き連れ歩いていく。
まるで興味がなくなったおもちゃを捨て置くように。
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