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さて煩い邪魔者はいなくなったし、下手な喜劇を見せられることもない、これからどうしようかと考えていると1人不機嫌面を隠そうともしない奴に気付いた。
「瑞季、何に苛ついてるんだ?」
「何に、じゃねぇ。途中で止めやがって。おかげでこっちは不完全燃焼だよ」
眉をしかめながら苦々しく言葉を紡ぐ倉橋の口調は未だにキレたまま戻らない。
それに苦笑しながら謝罪の言葉を口にする。
「ごめんごめん、あれはあのままヤってても時間の無駄だと思ったし、それに」
綺麗な金髪を一房掬いにこりと笑う。
「瑞季の綺麗な肌と髪にあいつのものが付くなんて我慢できないからね」
その笑みと言葉によって眉間に寄っていた皺はなくなり、つり上がっていた目尻も元に戻り、いつもの王子様スマイルを浮かべる。
「・・・・・本当に君には一生敵う気がしないな」
それに満足し長山も笑う。
金髪碧目のイケメン王子と漆黒に彩られた天使。
そんな2人が微笑みあっている姿は大変絵になるが他の者にとっては面白くもなんともない。
特に普段なら特攻隊長として先陣をきり長山の前に立つ脇坂は眉間に深く皺を刻む。
「おいっ!てめっ」
「長山っ!」
威嚇の意味を込めて発せられた言葉は唐突に聞こえた声によって遮られた。
木々の向こうから現れたのは先程までステージの上で遠山達に対峙していた鳴海。
短く息を吐きながら長山のすぐ近くで立ち止まる。
「・・・・・なんでしょうか?先輩?」
長山は静かな空間を好む。
賑やかなのはかまわないが、けたたましいのはご法度。
なので大声で自分の名前を呼ばれるなんてもっての他。
そんな嫌みを含めてわざと丁寧な口調で応対する。
実際、鳴海の方が年上なのだからなにも間違ってはいないのだけれど。
「お前はなんだ」
これまでにも何回も聞いた台詞に長山が呆れた目を向ける。
「なんだ、って・・・・あなたもさっき俺の名前を呼んだじゃないですか。長山、と」
「遠山葉瑠夏は毒蝶か」
「・・・・・・・・」
「お前はそれを知っていた。いつからだ」
「・・・・・・・・」
己の言葉に何も反応を返さない長山にそれでも鳴海は言葉を続ける。
「あの日、お前は俺の前に現れた。お前は何者だ」
「・・・・・・・それを知ってお前はどうする?」
それまで反応一つしなかった長山の口が静かに開く。
「どうするかは分からない。その時になってから決める。今はただの興味本意だ」
「興味本意ねぇ」
ふはっ
空気が微かに震動した。
それまで眉一つ動くことなく微動だにしなかった長山がさも愉しそうに笑う。
「そんな軽い気持ちで首突っ込んだらただじゃ済まないこともあるよ?夜の世界にいたんならそれくらい理解しているだろ?」
長山の言葉に今度は鳴海が微動だにしない。
ただ真っ直ぐ長山の顔を見つめるのみ。
そして落ち着いた声を空気に乗せる。
「・・・・それでも俺は知りたい。俺は毒蝶にチームをヤられた。俺には知る権利がある」
「ふ~ん・・・・なら放課後隔離校舎の教室に来なよ。そこで全部教えてあげる」
そう言うと鳴海の返事も聞かず踵を返した。
来るも来ないもアイツしだい。
だが長山は絶対的な確信があった。
アレは必ず来る。
真っ直ぐ前を見据え、貪欲に真実を求めるなら。
必ず。
クライマックスは過ぎた、
物語は緩やかに終息へと向かう。
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