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後悔先に立たず
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「お前はそうまでしていったい何がしたい」
「愚問だな。言っただろ?俺が愉しむためだと」
長山は当然のように口にする"愉しむ"ためだと。
「今は飽きたから場所を変えただけだけどね」
そう言って笑う長山には先程までの冷たい雰囲気は微塵も感じられなかった。
柔らかく微笑む今の長山には誰もが魅了されるだろう。
天使は実在したのだと。
ひどく感動するだろう。
だがそれもほんの僅かな間だけ。
近付けば近付くほど長山の残酷な一面を知ることになる。
そして思い知るのだ、
本物の天使なんてこの世にいないのだと。
「ココに来たのもあの街に飽きたから。それでも最初の1年は大人しくしてたんだよ?折角こんな山奥の全寮制の学校まで来たのに俺を愉しませることは1つもない。つまんなくて死ぬかと思った。それでも我慢したのはあの飛べない蝶が来るから」
「・・・・・っ!お前遠山が来ることを知っていたのか!」
「ふはっ、そんなに驚くことでもないだろ?こっちには真也がいるんだから」
名前を出された矢崎はひらひらと手を振り答える。
「アレが来る1週間前には知ってたよ」
生徒会や風紀でさえ遠山が来る3日前になってようやっと転入生の存在を知ったというのに、長山は1週間も前に知っていたという。
「嵐を巻き起こしてくれるとは期待してたし、実際その通りにはなったけど、生徒会があれほど馬鹿になるとは思わなかったよ」
「お前がそうなるよう手引きしたんだろ」
鳴海の言葉にきょとんと目を瞬かせる。
「生徒会が堕ちたのは俺の所為じゃないよ?馬鹿な顔だけの猿に懐いて自分で足を踏み外したんだ。生徒会に関しては自業自得としか言えないだろ?」
鳴海とてそれは理解している。
だが1週間前に遠山が来るのが解っていたなら。
遠山がどんな人間が解っていたなら。
何か対策がとれたかもしれない。
学校の崩壊を防げたかもしれない。
"たなら""かも"
解っている。
全て出遅れ、後の祭りだ。
別に生徒会に同情などしていない。
ただ
「愉しかったよ?」
この長山太一という人間の玩具になることは避けられたのではないのか。
どちらにしろもう過ぎたことなのだけれど。
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