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ー戦国の章ー
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もうどれくらいの血を流して来ただろう
どれくらいの命を消し去って来ただろう
本当はこんな事はもうしたくない
だけど、やらなければやられてしまう
女、子供も容赦なく敵なら殺されるんだ
そして俺も同じように、何人もの泣き叫ぶ子供の命を絶って来た
母親を殺せば子供も殺す
その方が楽に違いない
このまま生きていたって仕方が無い
どうせ殺されるまで母親を求めるんだ
そしていつかは誰かに殺される
そう思っていなければ心が持たない
でも今の俺は、油断して切られてここまで逃げて来た
もう死んでしまったほうが楽になるのかな?
親も殺されてもうこの世にはいない
なんで無意味な血を流さなければいけないんだろう
どうして見えない敵ばかり倒しているのだろう
俺のしている事は意味のある事なのだろうか?
「いっ・・・!」
腕を切られたらしい
血が止まらない
このままここで死ぬのかな
ふらつきながら歩き、桜の木の下までやって来た
蕾はまだ固い
俺は今年の桜を見る事は出来ないかもね
そんな事を考えながら桜の木にもたれかかって目を閉じた
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
誰かの気配がする
仲間なのか?
それとも敵?
もうどっちでもいい
これ以上血を流すのは嫌だ
足音が近付いて来る
静かに忍び寄って来る
仲間ではない
俺の命もこれまでか
何だか、つまらない人生だったな
こんな時代に生まれなければもう少しいい人生を送れたのかな?
そして足音が止まった
聞こえるのは、虫の声と鳥のさえずり
「殺していいよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「味方じゃない事は分かってる・・・だから殺してもいい」
「貴方は死にたいのですか?」
「面白い事を言うね・・・お前が敵なら情けは無用だ」
「私はこの桜を見に来ただけですので」
「えっ?」
「隣に座ってもよろしいですか?」
「・・・・・・・好きにしろ」
おかしな奴だ
敵なのに敵じゃない
桜を見に来た?
まだ咲いていないのに
「腕に怪我を?」
「だね」
「じっとしていて下さいね」
「えっ?」
そう言うと、そいつは綺麗な手ぬぐいを引き裂いて腕に巻きつけた
「いっ!」
「申し訳ありません・・・きつく結ばないと血が止まりませんので」
「どうしてそんな事を?」
「どうして?」
「うん」
「貴方もこの桜を見ていたのでしょ?」
「・・・・・・・・・・うん」
「でしたら無駄な血を流す事も無いでしょ?」
「うん」
閉じていた目をそっと開けて隣に座る男を見つめた
綺麗な銀色の髪
瞳も銀月のような色
でも明らかにこいつも数え切れないほどの血を流して来たんだろう
返り血がこびりついていた
「出来ました」
「ありがとう・・・俺は翔」
「私は和海」
「和海・・・」
やはりそうだ
どうみても敵だ、しかも大物
「綺麗ですね」
「うん・・・と言ってもまだ咲いてないよ?」
「この桜を含め、景色が綺麗でしょ?」
「うん」
「春になれば桜が満開になるでしょうね」
「それまで生きていられたらね」
「そうですね」
俺だって見たいよ
満開の桜を見たい
でも・・・
「翔はこれからどうするのですか?」
「えっ、どうするって?」
「お戻りに?」
「ああ・・・そう言う意味ね」
「はい」
「和海も戻るんだろ?」
「そうですね」
そう返事を返した和海と目が合った
何だろう、瞳がそらせない
「次に会う時は遠慮するなよ・・・戦場にいる和海は敵だ」
「翔も同じです」
「・・・・・・ああ」
そう返事をした自分が何となく嫌だった
次に会う時は敵・・・悲しいね
今まで涙を流した事は無かった
なのに今はすごく悲しい
「何故涙を?」
「わかんないよっ・・・でも、俺・・・和海は切れない」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「だから次に会った時は和海が俺を殺してね」
「貴方をですか」
「うん・・・それまで生き延びるから・・・他の奴にくれてやる命は無いから」
「では、私も生き延びなければいけませんね」
「だね」
「私は毎日この刻にここに居ます」
「えっ?」
「ここに居る時だけは、普通の人間で居たい」
「そうだね・・・俺も」
俺一人抜けた所で誰も気付いたりはしない
でも、今は少しだけ眠りたい
和海にもたれながら瞳を閉じ、浅い眠りに落ちた
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