アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
寒空の下1
-
嬉しさと焦りで、いつもより息が上がる。さっきまでの部活よりも本気で走っている。
目的地の自分の家まであと少し。
ドクンドクンと心臓が、うるさく音を立てる。
背中で揺れるリュックがうざい。額に張り付く前髪もうざい。
しかし、そんなことを気にしている時間すら惜しい。ならば、一歩でも先へ。
「…っはぁ……っあ……」
玄関の扉にぶつかる寸前で足を止める。
家の前で待っているとメールにあったが、玄関前まで来ても裕太に会わなかった。
耳障りな心臓の音と自分の呼吸音を聞きながら、あたりを急いで見渡す。すると、家を囲んでいる塀に背を預け、膝を抱えている裕太がいた。腕に頭を埋めているため、こちらの存在には気づいてなさそうだ。
ゆっくりと呼吸を整えながら近づき、そっと肩に触れようと手を伸ばす。
「裕太……?」
「っ……!」
肩をびくりと揺らしバッと上げた顔は、目の周りを赤らめ、眉を強く八の字にしていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
87 / 89