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Episode3 『眼鏡の花園くん』 ③
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不良生徒の足が振り上げられ、俺はもう絶体絶命の大ピンチでした。
痛みが襲ってくる…と思ったら、いくら待っても痛みはやってこなかった。
「空っぽなのは君たちの頭だよ」
その代わり、よく耳に通る声がひとつ。
見上げると、俺を蹴ろうとしていた不良生徒が苦しそうに叫んでいました。
その背後には、黒髪の、綺麗な顔をした高嶺桜の生徒。
残りの不良が叫び、彼に襲い掛かる。
「きりまぁーーーーー!!!!」
その名前を聞いてピンときました。
――そうか…!!彼があの……!
「霧間慎弥………………せんぱい」
霧間先輩は想像していたよりもずっと格好良い人でした。
不良との凄まじいやり取りの途中、俺は瞬き一つするのがもったいないと思え、目を閉じることができませんでした。
霧間先輩の戦闘能力は伊達ではない。
しかし、汚い不良たちの「暴力」とはどこか違う、流れるような滑らかさと美しさがある。
不良たちを殲滅した後、足蹴にし、「愚鈍」と呟いていたのは聞かなかったことにしましょう…。
「き、きり、霧間せんぱーーーーい!!!」
もう何度その名前を呼んだことか。
最初の方は緊張していて声も小さくなってしまい、聞こえ辛かったかもしれません…が!!
歩くスピードもなんか速いし、今はもう絶対聞こえてるはずなのに止まってくれないっ…!!
やっとのことで先輩に追いつき、前に立ち、行く手を阻む。
――もう逃がしませんよーーー!!!
「失せろ」のような類の言葉をかけられる気がしてちょっと恐怖もありましたが、俺は思い切り頭を下げて霧間先輩に感謝の言葉を贈った。
すると、どのような暴言はなく、代わりに
「君、あそこに居たんだ」
の一言。
俺はガツンと後頭部を石で殴られたような感じがしました。
――ま、ままままさか、俺の存在を把握することなく、不良という対象を懲らしめるためにとった行動だったのですかーーーーー!!!
てっきり自分を助けてくれたのだと勘違いしていた俺は恥ずかしく、同時に少しショックでもありました…。
しかし
そんな気持ちは、霧間先輩の顔を見たらすぐに変わりました。
俺の姿をわざと映さないその瞳は、少しも怖くない。
――…そんなの、今のは嘘だって言っているような顔じゃないですか。強がりな人なんですね…
俺は嬉しくて、そして霧間先輩がなんだか可愛くて、思い切りの笑顔で「そうですか」と言ってしまった。
霧間先輩は勘付かれたことを勘付いたのでしょう。
少しムスっとした顔でまた歩いて行ってしまいました。
――マズイ、怒らせてしまった…
「あ、あ!!ちょ、霧間先輩!」
もっと話がしたくて俺はとっさに引き止めようとしました。
あんな笑顔で返答してしまったので、てっきりシカトされると思いましたが、霧間先輩は後ろを振り返り、
「花園くんだっけ?君、もう入学式は始まってるんだけど」
と、風紀委員長のお説教。
――『花園』、じゃなくて、『花岡』なんだけどな…
と思いましたが、火に油を注ぐのは御免なので、これは俺の心の中に閉じ込めておきました。
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