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行きたくない
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「な、………」
「ねぇ、遙。その人誰かな?年上みたいだけど?」
暗い地下駐車場に声が響く。
その声は、紛れもなく
一ノ瀬さんだ。
「えっ、と……学校の先生で……」
「あぁ、遙の学校の先生か。…へぇ……」
そして、物を見定めるような目で先生を流し見る。
一ノ瀬さんの考えはわからない。
なんで、ここ場所にいるってわかったんだろうか。
「いや、すみませんねこんな登場で。はじめまして、俺は『遙の兄』の、智久(ともひさ)っていいます。いつも弟がお世話になってます〜、これから弟と一緒に服買いに行く約束してるんです。なので、返していただけますか?」
にこやかに、偽名まで使って。
「…お、おう……?ほんとか?」
怪しんでいるのか俺のほうを見る。
正直、俺にふらないでほしい。
「そうなんですよ、兄のお下がりばかりじゃ嫌なので」
そう言うと先生は、わかった言って俺の手を離してくれた。
「さよなら、先生」
別れ際にそう言って一ノ瀬さんの方向へ、足を進める。
地獄になるかもしれない方向へ、自分から足を踏み入れる。
そうしなければいけないから。
「遙…………おかえり。帰ろっか」
さっきまでの笑顔なんてなかったみたいな顔で。
そしてまた笑い出す。
俺は一度だけ、もう一度だけ先生の方を振り返る。
行きたくない
そんな気を込めながら。
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