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遙。
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今まで元気に過ごしていた人の変わり果てた弱々しい姿。
そんなものを見て晴れ晴れとした気持ちでいられるわけもなく、2人は互いに無言で駅まで歩いた。
「ねえ龍之介」
「……ん?」
最初に口を開いたのは逸人。
「遙のこと、どう思う……?」
「どう、ってなんだ」
「なんであんな奴と知り合ったのかなって…。校長ともなんかあるみたいだし。この変な問題解決するのって遙の人間関係とか全部知らないと無理な気がするんだよ…」
「……そうだな。でも俺達が下手に手を出したら、きっとまた遙が傷つくと思う。だから今は高野に任せよう、遙のこと。俺達はとりあえずこれ以上コトを大きくしないように普通に学校に通う。今俺達にできることなんて、何も無い」
遙のことをあんなにも心配していた奴の言葉とは思えず、逸人は拍子抜けしてしまった。
でもよくよく考えて見れば、今の俺達は足でまといでしかないと思った。
龍之介の考えは多分、まとめるとこうだ。
今は身動きを取らず、いつも通りの生活をする。遙の様子はどうやらあまり良くないらしい。まだ気が動転していて、落ち着いていない。あまり多くの人が関わると更に入り組んでしまう可能性もある。
何かしらの動きがあったら、きっと高野は知らせてくる。
高野が遙の周辺の事は大方調べているようだし、詳しくわかったら俺達も手を貸そうと。
「御見舞にも、行かない?」
「逸人は行ってもいい。ただ俺は行かない」
「そこまで気を張る必要は……」
「俺は、一ノ瀬に完璧に顔を覚えられた。あいつは今遙の居場所を探しているはずだ。だから、俺が病院に行ったことがバレた時点で終わりなんだ」
「…そう、わかった。なら俺は龍之介に遙の様子を定期的に伝える係。龍之介は何もしない係で、高野は調査係かな」
「係って…お前なぁ…」
「こんな命がけの事をする事になるなんて思わなかった。……はぁ、今頃手が震えてる」
どうやらお遊びで言った言葉ではなく、これくらいに思っていなければ気が持たないからという理由だったらしい。
見せつけてやろう。
「……絶対逃げない」
「当たり前だ」
意志は硬い、と。
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