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霧雨
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そろそろ、格子に上がる時間だ。
格子越しに外から覗ける部屋で道行くお客を誘う。
まあ、言ってしまえば客寄せだ。
本来ならこの見世でその仕事をするのは散茶だけれど、そうなると今、格子に上がれるのは薄氷と牡丹の二人だけで。
それでは少し寂しいだろうと格上の格子である竜胆兄さんと俺と朝露の三人も、予約の入らない日は客寄せをする事になっている。
格子って名前なのに格子に上がらないなんて変だと、禿の頃は思って居たっけ。
「朝露、今日は?」
「俺は佐久間さんの予約が入ってるよ」
「ああ、あのオジサマか」
「霧雨は?」
「格子」
朝露と俺は、双子の兄弟だ。
二卵性で似ても似つかないからこの見世の人間くらいしか知らないけれど。
五歳で此処に連れて来られた頃の朧げな記憶を辿れば、俺は父親に、朝露は母親に似たんだと思う。
格子に昇格すると寝起きする部屋も一人部屋が貰える。
でも、こいつは俺にべったりで寝る時も殆ど一緒だから、一人部屋をやった意味が無いと若旦那には苦笑いされたっけ。
「今日は、格子羨ましいって言わないのか?」
朝露は格子に上がるのが好きだ。
こいつは天性のたらしだと思う。
「だって、佐久間さんが来てくれるんだもん」
「お前ほんとおじさん好きなー」
「うん、まったりしてるのが好いんだよね」
「物足りなくないの?」
「若い人も嫌いじゃないんだけどねぇ。おじさんの方が気持ちいい」
まあ、此処にくるオジサマ方は経験豊富な人が多いからな。
「若い人ってガツガツしてるじゃん?激しきゃ好いってもんじゃないんだよねぇ」
なんて言ってるが、その若い奴等だってそもそも俺等より歳上の方が多いんだが。
「男は四十過ぎてからだよ!」
「あっそ……」
朝露がおじさんの良さを熱く語って居るが、若くて激しいのが好きな俺は大抵聞き流して居る。
俺も朝露も、セックスが好きだ。
だから、仕事もそんなに苦にはならないけれど、思ったようにして貰える事なんて無い。
まあ、お客はお金を払って俺達を買ってる居るんだから当たり前だ。
「きっと、俺が一番上手に虐めてあげられんのに、朝露の事」
「んー、そうだろうね」
「でもさー。血、繋がっちゃってんじゃん?」
「俺、霧雨のそういう真面目なとこ好きだよ」
「俺も朝露の淫乱なとこ好き」
生まれた時から、いや、生まれる前から寄り添ってきた俺達だから、これからもずっと寄り添って生きて行くんだろう。
交わる事は決して無いまま。
「じゃ、行ってくる」
「行ってらっしゃい」
にこにこと見上げる朝露を部屋に残し、格子へと向かった。
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