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第一話:春よ恋々
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─二年前─
ピンポーン
「ごめんくださーい」
縁側で野良猫たちと共に花見を楽しんでいると呼び鈴がなった。“はいはい”と返事をしながら急ぎ足で玄関を出て門を開ける。
そして、ゆっくりと来客の方を見ると視線同士がぶつかった。
自分より頭一つ分くらい高いところにある色素の薄い瞳に吸い込まれるように意識を持っていかれる。
そこから何故か時間が止まったような、この世界に私と目の前の人物しかいないような不思議な感覚に呑み込まれていく。
ドッドッドッドッドッドッ…
大きく波打った心臓は壊れてしまったのではないかと心配になるくらい早い速度で脈を刻んでいた。
この感じ…
何て言うんだろ…
「は、は、初めました!!」
今までに味わったことのない感覚に思考を停止していると、深々と頭を下げた彼がとても緊張した声色で間違った言葉を発した。
それが何だか可笑しくて可愛らしくて思わず吹き出してしまう。
「………………ふっ、あはははははは!」
一頻り笑ってから彼の方を見ると目を丸くしていて“やってしまった”と思った。
「す、すみません…こんなに笑うつもりはなかったんです……本当に、面目無い…」
「いっいえ、大丈夫です!ははは、先生のお陰で緊張が少し和らぎました。ありがとうございます。」
失礼なことをしたのにも関わらず笑顔でそう言ってくれてホッと胸を撫で下ろす。
それと共に、その表情に目を奪われた。
優しそうで、温かくて、少年っぽさが残る日溜まりの様な笑顔。
「えっと…今日から担当をさせていただきます。編集の富田良和(とみたよしかず)です。まだ入社して日が浅いので頼り無い部分もあるかもしれませんが、よろしくお願いします。」
「先程は失礼しました…作家の金田直(かなたなお)です。此方こそ、よろしくお願いします。」
何も考えず差し出した右手は彼の男らしくて大きな手に確りと包まれて、頬に熱が集まった。
嗚呼、これは
もしかして
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